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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2020年08月14日12時45分掲載
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毎日新聞記事 「コロナ禍に音楽の力」(村上春樹さん DJ体験語る) 音楽と物語の持つ力について
先日、たまった新聞を切り抜き・整理していて、毎日新聞7月12日付の「コロナ禍に音楽の力」(村上春樹さん DJ体験語る)に魅了された。作家の村上春樹氏がFMで時々、音楽番組のDJを担当していることは知っていたのだが、いつしか15回も重ねていたことに驚いた。これはもう副業(?)に立派に音楽番組のDJと書いてもよいレベルではないだろうか。そして、明日の8月15日にもTOKYO FMの「村上RADIO」で午後4時から16回目が放送されるそうである。ラジオの日時を控えて、その時間に視聴しようと思ったのは久しぶりだ。いつ以来だろう、多分、少年時代に関西で浜村淳が司会していた番組の「怖い話」を毎週、週末に聞いていた時以来だろう。
この毎日新聞の村上春樹氏へのインタビュー記事はかなり大きく、紙面下の広告を除くと「特集」の1ページ全部を使っている。そして、印象に残った言葉は村上氏が「声明」みたいな言葉は好きじゃないと語っていたことで、なぜかと言えばそれはロジックだからだ、と言っているところだ。ロジックよりも物語こそが共感を呼ぶ力があると言っているのだ。そして、そこに音楽と小説との親和性もあると言うのである。この村上氏の発想の原点には学生時代の学園紛争時代に起きた強い言葉の闊歩とその言葉に運動の主導者たちも追随者たちも無責任だったことがあると言う。今日、ツイッターにあふれる短い「強い言葉」の群れに対しても強い危惧を持っているようだ。あんな短い言葉で言いたいことが言えるわけがない、と語っている。
村上氏がロジックにアレルギーがあることは理解できたし、その姿勢にも共感した。しかし、一方で今、ロジックが求められているのは1960年代や70年代とは局面がまったく違っていて、もっと生活者の生きる原点に近いロジックが求められているのだと思う。だからロジックか、物語か、という二項対立の枠組みで音楽を称揚するのは不幸だ。政治や社会の場にはロジックが必要だし、安倍政権の不毛な政治はロジックを欠いている意味で、村上氏の言葉が政治からの逃走につながらないことを僕は祈る。
だが、そうした思いを持ちながらも、この毎日新聞の村上氏の言葉にはやはり、はっとさせられる。確かにロジックが氾濫し、短いアフォリズムみたいな言葉があふれていて、敵をどれだけ数行で倒せるかの競争のようになっている。だから、そうしたやり方とは異なる道があることを言いたいのだということが伝わってくる。ツイッターには政治を動かす力があり、これは大きな可能性があるけれども、同時に扇動されたり、画一化されたりするリスクもある。音楽が言葉とは異なる回路を開く、と言っているのだ。このことはおそらくゴリラの研究者である山極壽一氏と作家の小川洋子氏の対談『ゴリラの森、言葉の海』とも響き合うように思えた。
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