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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2020年09月27日13時47分掲載
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検証・メディア
マスメディアはスノーデンの内部告発を忘れてしまったのか Bark at Illusions
中国企業が運営する動画投稿アプリ・TikTokや中国通信機器大手・華為技術の製品を利用して中国政府が諜報活動を行っていると米国政府が主張し、問題になっている。中国政府による諜報活動には確たる証拠があるわけではないのだが、それが事実だという前提でマスメディアがいつもニュースを伝えるものだから、私たちはスパイ行為と言えば中国だと思い込まされている。しかし米国の国家安全保障局(NSA)の元職員、エドワード・スノーデンの内部告発などから明らかなように、最も大規模に諜報活動を行っているのは、米国だ。
2013年、スノーデンは、NSAが「国際通信ケーブルの上陸点に盗聴拠点を設けて通過する全データを総コピー」していることや、「マイクロソフト、ヤフー、グーグル、フェイスブック、スカイプ、アップル、ユーチューブなど米大手インターネット9社から一日数百万件にのぼる顧客情報を提供させ」ていること、「IT機器に『バックドア』(裏口)と呼ばれる情報収集の細工を施して出荷」していることなどを明らかにした(小笠原みどり『スノーデン・ファイル徹底検証』毎日新聞出版)。NSAは「標的である人物のネット閲覧行動を密かに監視・分析」して「ウィルスを仕込んだサイトやサーバーに誘導」し、「標的のパソコンをウィルスに感染させて、パソコン内のデータをそっくりNSAのサーバーに送り込む」こともしているそうだ(同)。 米国は英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドとともに「ファイブアイズ」と呼ばれるグループを形成し、緊密に連携して諜報活動を行い、そこで得た情報を共有しているが、ファイブアイズ以外の “同盟国” とも協力して諜報活動を行っている。日本を例に挙げると、NSAが在日米軍基地や大使館を拠点にして諜報活動を行っていることや、米国政府が日本政府に盗聴機器を提供していること、日本政府がNSAの諜報活動に対して資金提供を行っている実態なども、スノーデンの内部告発で明らかになっている(同)。
諜報活動は、「テロ対策」などの安全保障や、政治・経済活動をスパイする目的で行われている。例えば、米国政府は諜報活動で得た情報を基に、西アジアや北アフリカで “テロリスト” の「捕捉・殺害作戦」を行っている(同)。通信衛星情報とテータベース内の情報から標的の位置を予測して行われる裁判なしの暗殺行為は国際法違反だが、米国政府の “テロリスト” の判断基準が幅広く恣意的であることも問題で、一般市民に対する “誤爆” も後を絶たない。外交や産業情報を盗むための諜報活動の例としては、NSAが日本の省庁や大手民間企業などの電話をスパイ目的で長期間盗聴してきたことが、内部告発サイトのウィキリークスによって明らかにされている(同)。また市民の監視も諜報活動の目的になっており、特に「ジャーナリスト、人権団体、労働組合、平和運動、環境問題に関わる人々」が情報収集の対象になっているようだ(同)。 米国を中心としたファイブアイズによる諜報活動については、欧州議会の調査などで「エシュロン」と呼ばれる大規模盗聴システムなどの存在が知られていたが、NSAの元職員であるスノーデンによる膨大な機密文書の公開は、当時、世界に衝撃を与えた。
ところが、マスメディアは真偽が定かではない中国の諜報活動を事実と決めつけて問題視する一方で、ファイブアイズの活動については問題だとは考えていないようで、むしろ中国への対抗を理由に肯定的に捉える傾向がある。
例えば毎日新聞(20/8/1)は、「覇権主義的で強硬な姿勢が目立つ中国に対抗」するために、「機密情報を共有」してきた「ファイブアイズ」が結束を強めていると伝えているが、前述のようなファイブアイズのスパイ行為の実態については全く説明がない。「ファーウェイ製品を通じた中国政府のスパイ活動やサイバー攻撃」を警戒する米国政府や、「中国が香港への統制を強化したことなどに対し」て「対決姿勢を鮮明」にする英国政府、新型コロナウィルスに関して「独立した調査を求めた」ことを「きっかけ」に貿易など経済面で中国から「圧力」を受けるオーストラリア、華為技術の孟晩舟副会長兼最高財務責任者を米国政府の要請で逮捕した直後に中国当局に元外交官らを逮捕されるなど「政治的圧力」を受けるカナダなどが「中国との2国間関係の悪化を踏まえ」て接近し、「香港問題」について協議したり、「サイバー犯罪や真偽が疑わしい情報の取り扱いなどについて情報交換」するなど「共闘を加速している」のだと言う。
また毎日新聞(20/9/18)は、総理大臣に就任した菅義偉へのメッセージを集めた記事の中で、
「アメリカを中心とした英語圏5カ国の機密情報ネットワーク『ファイブアイズ』がある。五つの国は協力して中国に対抗している。日本にはそのなかに加わってほしい」
と述べる中国政府に批判的な作家・楊逸の論説を、ファイブアイズによる諜報活動の実態について何の注釈も付けずに紹介している。 日本経済新聞(20/8/10、20/8/13など)も、中国に対抗するために日本とファイブアイズが連携を強化する動きがあるというニュースを好意的に伝えている。
マスメディアはスノーデンの内部告発を忘れてしまったのだろうか。あるいは、本格的な米中冷戦の到来を望んでいるのだろうか。
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