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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2020年10月17日17時46分掲載
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フランク・キャプラ監督「ナチス 怒涛の侵略 (原題は「Divide and Conquer」) 米プロパガンダシリーズ「我々はなぜ闘うか」の3作目
書店などでワンコイン(500円)で売られていた第二次大戦中の戦史もののDVDの中に、「我々はなぜ戦うのか(Why we fight)」と題する米軍のプロパガンダ映画シリーズがあります。これは欧州の戦争に参戦するのを厭う米世論にナチスおよび枢軸国の危険性を呼びかけ、集団的防衛の重要性を語りかけ、究極的には参戦に好意的な世論を創り出すことにあったとされます。シリーズは全7作。監督は民主主義の価値を訴えてきた名匠フランク・キャプラとアナトール・リトヴァクです。このシリーズは戦後70年以上たってもなお外国で販売されているように、プロパガンダ映画としては出来がよいのです。7本の構成は以下。
1 ,Prelude to War (Capra, 1942) 2 ,The Nazis Strike (Capra, Litvak, 1942) 3 ,Divide and Conquer (Capra, Litvak, 1943) 4 ,The Battle of Britain (Anthony Veiller, 1943) 5 ,The Battle of Russia (Capra, Litvak, 1943) 6 ,The Battle of China (Capra, Litvak, 1944) 7 ,War Comes to America (Litvak, 1945)
1作目から3作目はナチスの脅威を描いています。一方、4作目の「バトル・オブ・ブリテン」から連合国軍の抵抗と反撃が軸になっていきます。 3作目の「ナチス 怒涛の侵略 (原題は「Divide and Conquer」)はナチスがポーランド侵攻の後に西に侵略を進めていくプロセスを描いていますが、原題が「分割して征服する」とあるように、欧州が1国、1国次々とナチスの毒牙にかかって倒れていくさまを描いています。大陸と英国を海上で包囲するためにまず拠点となる北欧のノルウェイを攻略しようと計画し、そのために足がかりとなるデンマークを攻略、そしてノルウェイのUボートの良港となり得るフィヨルドをものにします。この天然の良港こそナチスがUボート基地になると目を付けたと説明されます。映像が実に豊富です。まだ制作時は戦時中なのに、どう見てもドイツ軍側が撮影したと思われる映像がたくさん混ざっているのです。Uボート基地と空軍基地をノルウェイに持つことで英国空爆が可能になり、英国をUボートで包囲して物質的に孤立させることが可能になります。
さらに、隣国フランスを攻略するために、1940年5月10日にオランダとベルギーにドイツ軍の機甲部隊が一斉に攻め込みますが、それは英仏軍への陽動作戦で、真の攻撃目標はフランスに攻め込むことでした。「マジノ線」と呼ばれる長いコンクリの要塞を避け、突破は不可能と思われていたアルデンヌの森を4万5千の車両を持つドイツの機甲部隊が突破して大軍がフランスに突入します。オランダとベルギーの防衛に向かっていた英仏軍はフランス防衛に苦戦し、ついには防御ラインを易々と突破され、ついには屈辱的な休戦協定を結ばれます。この時のドイツ軍は準備万端で、ベルギーなどの要塞をモデルにしたものをチェコに作って予行演習をしていたことなどが語られます。さらに、民家を多数爆撃することで道路に難民を出し、反撃軍の到着を遅らせたと語られます。難民まで戦争に利用した、とナレーションは語ります。
とくに雄弁なのはたとえばノルウェイは第一次大戦時に多くのドイツ人難民をノルウェイは受け入れたのに、あの恩に対してこの報いはどうだ、この振る舞いを「ノルウェイ人は忘れない」と語ります。「・・・は忘れない」はベルギーも、フランスも次々と締めに語られます。半年前に、ヒトラーがドイツでの演説で、オランダもベルギーも攻撃する意図はない、みたいなことを語っている映像を1つ1つ効果的に使っています。最初にその演説を見せておいて、ナチスの侵略で都市がぼろぼろになって、難民が逃げ惑っている映像や死者の映像を見せた上で、もう一度、締めくくりにヒトラーの言葉の嘘を見せていくのです。ナチスは戦争に勝つためには嘘も、非人道的な手段もいとわないことを映像でクリアに示しています。
この映画には雄弁術があります。ナレーションが巧みです。脚本(ナレーション)を書いたのはジュリアス・エプスタインとフィリップ・エプスタインという双子の脚本家の兄弟で、ハンフリー・ボガードとイングリッド・バーグマンが演じた「カサブランカ(1942)」などの脚本を書いています。「カサブランカ」ではアカデミー脚色賞を取っています。このエプスタイン兄弟のナレーションはこのプロパガンダシリーズのどの作品も明快で力強い声があり、説得力に満ちています。
それとともに、欧州が軍事的にどのように侵略されていったのか、その全容がこの3作目の「ナチス 怒涛の侵略 (原題は「Divide and conquer」)にはよく描かれていています。しかし、軍事というより、むしろ多くの人に取っては歴史の学習に良い教材でしょう。たとえばフランスがドイツの侵略を防ぐために作った「マジノ線」がどういうものだったかはこの映画を見ると、よくわかります。また、国々がどういう順序で侵略されていったのか、そのプロセスもこの映画を見ると、よく理解できます。また、フランス軍がなぜあっけなく敗れたのか、についても簡潔に描かれています。今まではっきりとわからなかった歴史のデテールがこれをみると、はっきりしてきます。
補足
このプロパガンダ映画では最後に徹底抗戦を唱えるドゴール将軍が登場して、戦いはこれからだというメッセージで終わっています。第一次大戦の時にフランス軍は攻撃精神を持っていたが、第二次大戦前夜にはマジノ線などの構築で、独軍の攻撃を待つ精神に変わっていた。米軍のプロパガンダでは、この変化こそフランス軍の歴史的な敗北をもたらせた原因だと結論しています。そのことは、ドイツ軍が1939年9月1日にポーランドへ侵攻した直後に、英仏両国はポーランドとの軍事協定に沿ってドイツに宣戦布告しますが、そこから翌年5月までドイツ軍が攻めてくるのを指をくわえて待っていた、と見ています。この1939年9月から翌年まで、もし英仏軍がドイツに攻め込んでいたら? これは今まで考えたことがなかったですが、この映画ではその問いかけをしているのです。この英仏両国が自国へのナチの攻撃を待っていた間に、デンマークが落とされ、ノルウェイが落とされ、という風にナチスは着々と自分たちに好都合の軍事拠点を築いていきました。
ドイツがヒトラーの元で着々と重戦車などを量産して、軍事力を増強していることは英仏両国にわかっていました。この映画でもフランス軍のドゴール将軍の部隊は攻め込んできたドイツ機甲軍団に突撃して、その攻撃陣形を断とうとしますが、あまりにもドイツの車両と差があり、結局、撤退を余儀なくされたと説明されています。この歴史の教訓は今日、苦く感じられます。この映画では1930年代のフランスの労働運動や左派政権のことをあまりにも批判的に描いています。責めを負うのがたとえ左派であれ、右派であれ、攻め込まれた結果は間違いありません。そして200万人のフランス国民がドイツに連行され、強制労働などを強いられたと語られます。
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