米大統領選まであと2週間。先ほど、民主党候補のバイデン氏の経済政策への期待が高まり、世論調査でトランプ大統領を抜いたという記事を先ほど読みました。COVID-19の中、大富豪はますます富を増やしている、という情報に何度か触れましたが、連邦の労働者の最低賃金はアメリカの連邦では2009年以来、時給7.25ドルに据え置かれています。以下はアメリカの労働統計局(U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS)のオフィシャルデータです。
最低賃金およびそれ以下で働いている労働者が米国には2019年当時で、160万人存在するそうです。これは時給で給与を得ている労働者の1・9%に相当。また、時給で報酬を得ている労働者は8230万で、時給およびサラリーで収入を得ている労働者の58.1%を占めます。
https://www.bls.gov/opub/reports/minimum-wage/2019/home.htm 2009年に大統領に就任したオバマ大統領の最初の仕事はリーマンショックからいかに米経済を救うかにあり、10%にも高まっていた失業率を下げることも課題でした。オバマ政権は徐々に失業率を下げて行きました。しかし、連邦の最低賃金が今日まで据え置かれているように、最低賃金が低い中での、ひいては平均的な給与が抑えられた中での失業率の改善でした。現在の1ドル=105円で換算すると、7.25ドルは761円です。最低賃金が低いと批判されている日本から見ても決して高くはありません。
ただし、全米50州の中で州別に見ると、州で定める最低賃金はもっと高いところが多く、ばらつきこそありますが、改善を見せています。Jetroの以下の今年のレポートはとても有益です。執筆したのは菊池 蕗子(きくち ふきこ)氏。
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2020/bcecd03e6592f577.html 連邦の最低賃金と州の最低賃金が同じところがアイオワ州やテキサス州など14州あります。一方、連邦の最低賃金より高い州は29州に上ります。驚いたことに連邦最低賃金より低い州も2州あり、ジョージア州とワイオミング州で、いずれも5.15ドル(540円)です。アラバマ州やルイジアナ州のように州の最低賃金を設定していないところも5州あります。
連邦の最低賃金と州の最低賃金が異なる場合、Jetroはこう説明しています。「現在、連邦法で定められている最低賃金は7ドル25セントで、この値は2009年7月から変わっていない。州法で独自に最低賃金を定めた場合、従業員は、連邦最低賃金と州最低賃金のうち、より高い方の賃金を受けとる権利がある。」そんなことなら、ジョージア州とワイオミング州はなんでわざわざ連邦より低い州の最低賃金を設定するのかなあ、と思いますね。
昨年暮れから今年初めにかけて、21の州で最低賃金が引き上げられました。最低賃金がトップのワシントン州では1・5ドル引き上げられ、時給13.5ドル(1417円)へ。2位のマサチューセッツ州では0.75ドル引き上げられ、時給12.75ドル(1338円)になっています。 このJetroのデータでは州単位でなく、もっと細かく見ていくとすでに最低賃金が時給15ドルに達した市や郡などの自治体も存在するということです。「ニューヨーク市では、2019年12月31日から、企業規模に関係なく15ドルに引き上げた。2020年1月1日現在、17の市や郡において最低賃金が15ドルを超えている。」 ニューヨーク市ではすでに時給15ドル(1575円)になっていました。
このJetroのレポートがUPされたのは今年の3月4日で、このあと、米国はCOVID-19に席巻されてしまいます。しかし、バイデン候補と民主党の時給15ドルへの政策とか経済政策に、金融界などからも期待がだんだん高まっているのだそうです。Jetroのレポートでは今年年内に24州で最低賃金を引き上げる予定だったようですが、COVID-19の中でどうなっているのでしょうか。もし感染症さえ蔓延していなかったら、とトランプ大統領は地団太を踏んでいるかもしれません。
※With pandemic and presidential race, $15 minimum wage could get another push(CNBC)
https://www.cnbc.com/2020/07/15/with-joe-biden-ahead-in-polls-15-minimum-wage-could-get-another-push.html これは最低賃金15ドルを2025年に目指すバイデン候補の政策について書かれた興味深い記事。トランプ大統領は最低賃金が15ドルになったら経営者は困ることになると警告しているが、レストランやサービス業などのビジネス界では最低賃金が上がって生活にゆとりができないと、外食したりサービスを受けたりする消費者が生まれないと考えているようだ。今、大幅に雇用が失われるカオスの中で、バイデン候補の時給15ドル案がじわじわ効いているのかもしれない。
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