このシリーズは2014.07(27)以来中断していたが、再開する必要ができたようである。科学というものの本質が現在社会の中で踏みにじられて、非科学的主張が、政治的に科学を装って、しかもそれによって利益を得る側の政治・経済力で、世の中に喧伝され、市民を欺く例が増えている。これには、事象を充分に検討せずに報道するメデイアの不勉強と、政権・報道関係の経済支配者への忖度も寄与している。2、3の例を考えてみる。
(A)福島の子ども達の甲状腺ガン多発
2011年3月の福島第1原発の過酷事故後,福島の子供達の間に甲状腺ガンが多発、正常の罹患率に較べて5-60倍ほど。これは、おそらく実際よりも少ない数値であろうが、ともかく多くの子供達が甲状腺ガンにかかり、その大多数が手術を受けていて、危険な状態のガンであったことが判明している。これは手術を行なった医師が明言している事実。
チェルノブイリの事故でも、子供達に甲状腺ガンが多発し、事故から放出された放射性物質からの放射線に起因すると認められている。ウクライナでは、事故数ヶ月後から、被ばくしたと考えられた多くの子供達についてその甲状腺への被曝線量を測定しており、その測定値とガン発症率との相関関係も充分に検証されている。その上、被ばくしなかったと考えられる子供達多数のデータを比較し、被ばくしなかったグループには、甲状腺ガンは見られなかったという報告もある。
さて、福島県・日本政府のこの問題への対応は、科学的を装っての科学的事実の否定の試みである。否定の根拠の主なものは:(1)事故によって放出された放射線量は、チェルノブイリの約7分の1で、チェルノブイリほどの健康障害が生じるはずがない;(2)子ども達全員に検査を施した結果、検出・治療を必要としないようなガンまでを検出した過剰診断に過ぎない;(3)被ばく線量と発症率には優意な相関性がない。
福島事故から放出された線量は、構内にある測定器による事故時の空間線量から推定されたものであるが、その推定値には、数倍の過小評価があること、そして事故時点以後も放射性物質は遺漏しつづけており、その総量はチェルノブイリのそれを凌駕(おそらく少なくとも3倍ほど)している。
手術を必要と判断された子ども達は、先にも述べたように、手術医が、手術が妥当であったと証言している。過剰診断が原因とするならば、福島以外、特に被ばく量が充分に低い地域の子ども達に同等の検査を行い、差があるかないかを検証するべきだが、これを政府側は徹底的に否定している。その政府側の否定の理由は、検査によってガンが見出されると、不必要な手術が行なわれ、一生甲状腺ホルモンを服用しなければならないなどの迷惑をかけるから。しかし検査によると考えられる過剰診断が、過剰治療になるとは限らない。ガンが見られたと診断されても、治療をするかどうかは別問題である。福島でも、過剰治療が施されたという証拠はない。なんども繰り返すが、手術を担当した医師は、全ての手術は充分に正当化されるものであったと証言している。
なお、こうした政府側の過剰診断の主張の根拠は、韓国での研究結果であるが、それは、小児甲状腺ガンではなく、一般の人達への検査結果であり、たしかに、大人では、甲状腺ガンが比較小さく、生きている間に手術を必要としないケースが多いことは判明しているが、小児甲状腺ガンは、かなり違うようである。たとえば、福島の子ども達の場合は、かなり大きく、転位もしていたケースがかなりあったようである。
被ばく線量と罹患率に関しては、政府側(東大,福島医大)からは数報の学術論文が発表されているが、被ばく線量の推測値が充分な根拠を持たないうえに、関係検証のための疫学的・統計的扱いが不当であることが示されていて、科学的根拠とはなり得ていない。
(B)気候変動
現在の地球温暖化の主要な(90%以上)原因が、人為的な温室効果ガス(特に2酸化炭素)の増大であるというのが、科学的に検証されたものであるというのが、気候変動運動の主張である。しかし、人為による2酸化炭素などもなかった地球の全歴史45億年にわたって気候は変動し続けてきた。そして地球上生命の消滅に近い影響を及ぼすような現象も何回も起っている。
現在の問題は、(1)温暖化の90%以上の原因は2酸化炭素の人為的増大によるのか、(2)現在観測されている異常気象(台風、集中豪雨、山林火災など)が、温暖化によって起っているのか、という2点である。 (1)の点に関しては、今からおよそ200年前(産業革命)までの、人類による2酸化炭素の排出が顕著でなかった期間でも、温暖化も寒冷もあったこと、つい最近(20年ほど前まで)までの地球温度の変化は、太陽の活動と併行していたこと、もっと遡れば、地球と太陽との距離の変化などによっていたことなど、人為と無関係な現象であったことなどを指摘しておきたい。 (2)異常気象も、確かに、ここ数年は顕著になっているようである。しかし、これも、少なくとも数世紀の長期にわたって異常気象がどの程度起っていたかを充分に検討する必要がある。
こうした充分な検討も含めないで、何らかの仮定を儲けてのシミュレーションだけで、2酸化炭素の増大量だけが現温暖化の原因であるとするのは、科学的ではない。おそらく、2酸化炭素の増大も寄与しているとしても、温度上昇の原因の90%以上というのは充分に検討しなければならない。
地球の温度(地表面、海洋表面、地表といっても水面からの距離はなどなど)といっても、実際は、各地点で、温度は異なる。そうした広範な、温度の変化をどう、地球全体の温度の変化とするかだけでも、この問題は非常に複雑である。現在の地球の気候変動は、自然現象,人為現象など様々な原因が錯綜しており、確かに、産業革命後、そして特に過去200年ほどの人類の、環境への影響の総体の結果も寄与しているはずである。なお、この問題に関しては、(注1)および「気候変動と原発」(注2)も参照されたい。
(C)コロナ禍(Covid-19)の治療(医薬品対ワクチン)
2019年11月に端を発したとされる現在のコロナ禍(Covid-19)は、まだ不明なことが多いが、パンデミック宣言もあり、世界中を恐怖に陥れ、人類全体の生きる道である経済を根底から揺るがしている。ここでは、科学と非科学の抗争が顕著である。
根本的な問題にはPCR検査の妥当性、集団免疫などがあるが、それは今は差し置いて、医薬対ワクチンの問題について考えてみる。 科学的に見て、ワクチンは特定病原(菌、ウイルス)に対する抗体を体に作らせ、実際にそうした病原に感染した場合に抗体を作り出すという獲得免疫を植え付けるというもので、その有効性はかなりの例ではっきり検証されていると考えて良いと思う。問題は、特定の病気に対して、有効で安全なもの(酷い副作用が多発しない)が速やかに出来るかどうか。おそらく、長年を掛けて試行錯誤,検証(人体実験までを含めて)を繰り返せば、人類の英知は、有効なワクチンを開発することは可能であろう。ただし、現今のワクチンには、感染予防作用はあるにしても、長期保存などの目的のために、様々な添加物が加えられているケースが多く、それが深刻な副作用を及ぼすケースがかなり見られている。
それはさておき、問題は、緊急なケースで、現在のCovid-19に有効で安全で感染拡大を防ぎえるものをいかに速やかに開発できるかである。そして、パンデミックと称されているので、広範なワクチン使用が必要とされ、ワクチン開発企業にとっては、成功すれば、莫大な利益が期待できる。
ワクチンは、感染拡大を抑える効果があるが、現在感染し治療を必要としているケースには役立たない。このためには、医薬その他の治療が必要である。Covid-19に感染したが,重症化を防ぎ、速やかに回復を促す医薬品の開発も重要である。
こうした薬品の一つに、マラリアに1936年ぐらいから使われていたハイドロキシクロロキン(HCQまたはクロロキンCQ)が、Covid-19にも有効であることが、かなり沢山の医師によって報告されていた(例えば(注3)2020.04.17発表)。この薬品が現コロナの前に発生したSARSコロナウイルスにも有効であることはわかっていた(注4)。 ところが、こうした薬品の有効性が確立されて、安価で広範に使用されると、新たに新薬を開発している企業やワクチン開発者にとっては不都合なのである。特に、アメリカのGilead Sciences なる会社のレムデシビルなる新薬およびワクチンなどとの争いのような現象が起っているのである。ここではその1例を紹介する。
かなり早い時期(2020年3月11日)に世界保健機構(WHO)はパンデミックを宣言し、ワクチン開発の後押しを明確にした。多くの国で、ワクチン開発競争が始まった。特にアメリカでは、特定大企業にワクチン開発が集中し、その開発には、メリンダ・ビル・ゲイツ財団などが後押しをし、NIAIDの長であるアンソニー・ファウチ博士がその開発に賭けている。また、レムデシビルなる新薬もトランプ大統領がCovid-14に感染したとされた際には、投与されたと報道されている。 HCG・CQの有効性がかなりの医師によって主張され、使用され始めたのだが、2020年5月の段階で、イギリスの有名医学誌ランセットに世界各国からデータを集めて検討したところ、HCG・CQには今回のCovid-19には有効性が認められなかったという論文が発表された(注5)。この論文に対して疑問をもった科学者その他が、論文の根拠になった大量のデータの信憑性を著者達に糾したところ、曖昧な返事しかえられなかった。でっち上げのデータであったようなのであり、この論文は、ランセット誌から削除された。 ところが、この論文の、“HCQ・CQは、Covid-19には無効、むしろ害あり”というのが、WHOの主張になり、HCQ・CQの使用は禁止された。
なお、2009年に発生したスワインフルー(豚フルー)が、やはりWHOによってパンデミックとされた。このフルーは、通常のインフルエンザとあまり違わないものと判明し、やはり、製薬業界のプレッシャーでパンデミックとされたということは、十分に検証された(2009年の(注6、7など))。製造されたワクチンは各国政府に買い取られていたが、無駄とわかり、廃棄された。しかし、ワクチン業者はおおいに儲けたのである。
(注1)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201910150820372 (注2) http://vsa9.blogspot.com/2020/08/blog-post.html (注3) https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(20)30296-6/fulltext (注4) Virology Journal, 2, article number; 69 (2006) (注5) Mehra MR, Desai SS, Ruschitzka F, Patel AN, "Hydroxychloroquine or chloroquine with or without a macrolide for treatment of COVID-19: a multinational registry analysis", Lancet. doi:10.1016/S0140-6736(20)31180-6 (注6) http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200912131511030 (注7) http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200912231038193
|