現在世界中に蔓延している新コロナウイルス(SARS-CoV-2)による病気(Covid-19)が引き起こす医療・経済・社会問題、人類が初めて直面する複雑・深 刻な問題のようである。まずは、深刻さを示すとされる感染者数の拡大すなわち、感染者数,死亡者数などの本当の数値を知る必要がある。2020年10月18日現在の公式の全世界の感染者(これまでにPCR検査で陽性と判断されたもの)は4千万人、死亡者数(陽性と判断された上で死亡したものの数と仮定)は百十万強となっている(ここでの議論は、ワシントンポスト2020.10.18のデータ(注1)に基づく)。
(A)感染者数の問題 この問題点の基本は、PCR検査の正確さ。すなわち、基本的には、PCR検査での陽性は、本当に検査対象者がこのコロナウイルスに感染した(症状が出るほどに充分な数のウイルス(いや、それに含まれるRNA(それから変換されたDNA))が検体にあったことを充分正確に検証できているのか。検査の正確さを期すためには、サンプルの取り方、その処理の仕方、プライマー(どのようなプライマーが用いられているか─ウイルスのRNA(を変換したDNA)のどこの、どのぐらいの長さのプライマーか)の選択、DNA複製を何回繰り返すか、その他、さまざまな問題点があるが、世界中の各所で充分な検討がなされた上で、PCR検査が行なわれているのか。PCR検査対照の選択の妥当性など。その結果の感染者数(陽性者数)は真の感染者数を表現しているか。
すなわち、発表されている数は、真の感染者数に近いのか、それよりも多い(擬陽性がかなりある)のか、少ない(偽陰性がかなりあるか、または、検査対象が少なすぎ)のだろうか。検査対象数が少なければ、陽性者を見落としている可能性はかなりある。例えば、日本は、各国と較べると、PCR検査数は格段に低い。これが、日本での感染者数の少なさの原因なのか。アフリカ諸国での、比較的に感染者数が少ない原因の一つはこの問題か。
この問題の根底には、どのような状態の人をPCR検査の対照にするかということがある。発熱、咳その他、現在のコロナウイルスによる初期症状がある人に検査の対照を絞るか、それとも、そうした初期症状の有る無しに拘らず、感染がはびこっていると思われる地域の住民全員に行なうかという問題がある。世田谷区が、いわゆる「社会的検査」を実施、この後者に近い方式を打ち出している。
さて、現在までの数カ国の感染者(10万人当り)をみてみよう。米国の感染者数は、10 万人あたり2430.5人、日本のそれは73.7人で、日本の33倍。またイタリアで687人,イギリス1085人,フランス1307人,スエーデン 1003人など、米国の半分ほどだが、スペインでは1989人で、米国と同程度 。なお、米国の北隣のカナダのそれは534人、南隣のメキシコでは667人で、米国の4分の1ほど。どうして米国はこのように感染率が高いのか。なお感染者数の多い国には、 他にブラジル2475人、パナマ2938人、クエート 2761人、カタール 3570人などがある。なお、逆に日本は圧倒的に低く、ヨーロッパ諸国と較べても10分の1以下である。
こうした感染率の高いところにはなにか特別な理由があるのだろうか。このウイルスは人から人へ近距離で移動・着地し感染するということなので、人と人との接触が重要な要素であり、国々は、完全なロックダウンから、2m以内の接近をなるべく避けるというやり方、マスク着用、そしてそうした考慮は完全に無視する政策(その実行)などなど様々あるし、現実にどの程度実行されているかの判断は困難である。上にあげたヨーロッパ諸国でも国によって多少の違いはあるが、スエーデンを除いて、ある程度のロックダウン的政策がとられたが、第1波の後の弛みで、感染は増大しつつある。米国も州によって違いはあるが、多かれ少なかれこうした政策が施行されていたので、感染率はヨーロッパ並ではないかと思われるが、その数倍であるというのが発表されているデータである。どうしてか。
このような数値が出る理由の一つとしてあげられているのが、PCR検査の仕方、すなわちDNA複製回数である。20回でDNAは元の数の100万倍、30回で10億倍、40回で1兆倍となる。普通は30回程度で検査は行なわれているのだが、どうもアメリカの多くの州では40回ぐらいまでの方法が標準らしい(注2)。そうなると、サンプル中にある影響力のなくなったウイルスの破片みたいなものまでが、数が拡大されて検出され、擬陽性となる可能性がある。このような陽性は、ウイルスに感染したこととは違う。こうしたことを考慮すると、米国での陽性者とされたうちの90%近くまでは、本当は感染していなかったのではと、この報告者(注2)は主張している。
この問題(PCR検査偽陽性)は米国のみの問題ではなく、今回のパンデミックとされる現象の根本問題であることを、イギリスの研究者が指摘している(注3)。なお、原理的に、偽陽性であるなしに拘らず“PCRテスト陽性”そのものは、必ずしも”新型コロナによる病気に感染したことを意味しない“と言う指摘もある(注4)。
PCRの偽陽性率がどの程度であるのか、定かではない。そこで、PCR 検査の公式発表による陽性率(陽性数/テスト数)を調べてみよう。発表されているいくつかの国での陽性率は:米国 6.48%、インド7.94%、ロシア2.61%、イギリス2.57%、ドイツ1.92%、スペイン6.42%,フランス6.93%、イタリー3.13%、カナダ2.3%、日本3.83%、異常に高いのが、ブラジル29%、南アフリカ16%などである。この数値には、真陽性と偽陽性が含まれている。もちろん各国で違いがあるが、まあ低い数値が真陽性率を表していると仮定し、ドイツの2%ぐらいが真陽性率とすると、ほとんどの国の公式感染者数には、かなりの偽陽性数も含まれていると考えられる。この偽陽性者は、無症状とされる人々に相当するのかもしれない。
さて、日本のように感染者数が少ないのはどうしてか。日本ばかりでなく、南アフリカ(1202人(10万人あたり)を除くサハラ以南のアフリカ諸国は、この数が、2,3を除いて、10台である。そして、東南アジアから豪州の国々の感染者数も低く(オーストラリア108人、ニュージーランド38人)、非常に低い国(ヴェトナム 1.2人、台湾2.3人、タイ5.3人、中国6.5人など)もある。中国、ヴェトナム、台湾, ニュージーランドなどは、コロナ禍発生直後からの徹底的な防護策が功を奏したとされている。
日本の感染者数が圧倒的に小さい理由がPCR検査数の少なさにあると多くの人に指摘されている。そこで、検査数を例えば、カナダのPCR検査数と同程度 にしたとすると、日本の感染者数は10万当り729人(全人口の0.7%)でヨーロッパ並、全数でいうと約90万人、公式発表数の約10倍ということになる。しかし、日本の感染者の実数は、やはりそれほどは多くないのではないかというのが印象である。それは人々の動きその他からの印象であるが。それには、BCGなどの効果や、高い衛生観念などが効いているのかも。何れにしても、実数は充分に検証されるべきである。
(B)死亡者数(死亡率)の問題 10万人あたりのCovid-19による死亡者数は:米国66.7人、スペイン71.7人、イタリー60.6人、フランス49.7人、イギリス 65.4人、スエーデン 57.5人、カナダ28.1人、メキシコ67.5人,ブラジル 72.8人;これらの国では、50─70人程度。一方、日本1.3人、インド8.3人、オーストラリア3.6人、ロシア26.7人などは、その数十分の1から数分の1。
問題は、死因をどう同定するかである。前者の高死亡率の国では、死亡者の多数、イタリー、カナダ、スエーデンなどでは90%ほどが持病を持つ高齢者であった。ということは、そうした持病がコロナウイルスの影響で悪化して、死亡に至ったのか、それとも、このコロナウイルスによる肺炎とか、血栓ができたための結果なのかの判断が充分におこなわれているのかが問題。前者ならば、コロナウイルスによる直接死でなく、後者のみが正式の死亡者である。 実は、この前者のような死亡がコロナ死として公式に発表されているということが、米国やイタリーの現場の医師達によって告発されている(注5)。最近の米国CDCレポートも、死亡者の94%は、持病に基づく死因をもっていたと認めている(注6)。ということは、米国やイタリー(そしてたぶんその他の多くの国でも)でのCOVID-19による死者は、実際は公式に発表された数のおよそ10分の1ということである。 おそらく、このような死因の誤認により、COVID-19による死亡者数が多くの国で、過大評価されているものと考えられる。
しかし、逆の場合もある。日本の死亡率の低さは、オリンピック開催を断行するために、死亡率を小さく見せる必要があり、肺炎で死亡した場合、新型コロナによるものであっても、通常の肺炎による死亡とされたかもしれない。これも可能性であり、真相は不明である。
(C)致死率 感染者の何%が死亡するかという致死率を見てみると、高齢者ほど高くなる。日本での各年齢層での致死率は、80歳以上が14.8%、70代が6.8%、60代2.5%、50代0.6%、40代0.3%、30代0.1%、以下ゼロとなっている(注7)。日本の全体での致死率は (2020.09.17 時点で1.9%) 現時点(2020.10.18日)では1.8%。次のデータでも括弧内の数値は2020.09.17日時点でのもの。
したがって高齢者が多く、死亡率が高い国で、全体の致死率が高い。致死率(死亡者数/感染者数)が高いところは、西ヨーロッパ諸国が多い。いくつかの例を上げると:イタリー(11.9) 8.8%、イギリス(10.8) 6.0%、ベルギー(10.0) 4.9%、オランダ(6.7) 2.9 %、フランス(6.7) 3.8%、スエーデン(6.6) 5.7%など。北米ではカナダ(6.5) 4.9%、メキシコ(10.9) 10.1%と高いが、米国は(3.0) 2.7%。 ロシア(1.8) 1.6%、ブラジル(3.0) 2.9%、オーストラリア(3.1) 3.3%。これらの致死率の低い国では、感染者が低年齢層に集中しているために、致死率が低いのかもしれない。
興味深い事実は、ほとんどの国で、致死率が、1カ月前と比較して、一様に低下していることである。この理由には、(1)感染する年齢層が低い方に増えている;なぜか:高齢者への危険性が高いことが各国で認識されて、高齢者対策が改善されつつあることと、ロックダウンなどの制約が緩くなったために、低年齢層の感染が増えたこと、(2)低年齢層の感染が9月中旬以降増えていて、ヨーロッパの主要国の感染が急増しているが、実は、この急増は、PCR検査での擬陰性のために、感染したことにされても無症状で、死に至ることが少なくなった;などが考えられるが、これらのことを充分に検証するには、各国の感染数(感染率)の年齢分布のデータが必要だが、まだ充分に検討できていない。
(D)結論(一応の) 以上の考察からは、現在各国から発表されている感染者数・死亡者数は多くの場合、過大評価されているようである。こうした現象は、ヨーロッパ諸国,米国,カナダなどの国々で顕著なようである。感染がPCR検査による陽性とされているが、どこまでが本当の陽性数なのか、偽陽性はどの程度あるのか、実数は不明確であることにかわりはない。ただし、日本は、 PCR検査の不足による過小評価の傾向が未だに続いているようであるが、先にも述べたように、BCG摂取その他の効果がこうした感染者数値の低さに現れているのかも。
ただ全体としてみると、西ヨーロッパ諸国と北米で特に感染率が高く、東・東南アジアからオーストラリア、ニュージーランドといった地域は、感染率がそれらの数分の1から10分の1ほど低い。こうした感染率の地域差が、対処の仕方の違いが反映しているのか、ウイルスの変異株が違うのか、など、まだまだ不明なことの多い現象である。その根本原因は、やはり、感染者数の実数が不明確な点にあると思われる。
(注1)https://www.washingtonpost.com/graphics/2020/world/mapping-spread-new-coronavirus/ (注2)https://www.rt.com/op-ed/499816-positive-covid-virus-contagious/; https://www.nytimes.com/2020/08/29/health/coronavirus-testing.html (注3)https://www.globalresearch.ca/lies-damned-lies-health-statistics-deadly-danger-false-positives/5724417 (注4)https://www.globalresearch.ca/covid-19-closer-to-the-truth-tests-and-immunity/5720160 (注5)https://www.globalresearch.ca/coronavirus-why-everyone-wrong/5718049 (注6)https://www.globalresearch.ca/what-is-covid-19-sars-2-how-is-it-tested-how-is-it-measured-the-fear-campaign-has-no-scientific-basis/5722566; https://data.cdc.gov/NCHS/Conditions-contributing-to-deaths-involving-corona/hk9y-quqm (注7)https://www.hinapishi.com/entry/2020/04/26/Mortality_by_age
|