私は今年に入って翻訳書を出してから、泥縄式的に辞書を引く、というより日常的に毎日読むようになった。先日、その経緯については書いたのだが、今回は私が目下、愛読している辞書について。過去に使ってきた辞書は私の場合、白水社のものと旺文社のものが多かった。今回、私が愛読しているのは旺文社のNouveau Petit Royal(第三刷)という仏和辞典である。
愛読している、というより実質的にノートにほとんど丸写ししているのだが、と言ってもアルファベットのAから順番にやるというようなことはできないし、飽きてしまうので、私の場合はサイコロ賭博のようにぱっと開いて気の向いた単語から書き写していき、筆写が終わったら蛍光ペンでしるしを付けて置く。こうすると、漏れなく作業ができるし、どのくらい進んでいるかもめどがつく。旺文社のNouveau Petit Royal(ヌーボー・プチ・ロワイヤル)に掲載されている単語は重要度に沿って赤字と黒字にわかれている。重要単語が赤字であり、赤字の中にもランク付けがされている。
重要度に沿って書くと以下の1〜4が赤字で、5が黒字である。
1)570 2)1100 3)2600 4)7600 5)27000・・・・黒字
赤字の合計は約11800語。黒字が約27000語。全合計で約38870語。つまり、全体のおよそ3分の1が赤字ということになる。この赤字をまず漏れなくすべて覚えてしまうことが私の目下の目標だ。マチュー・ポット=ボンヌヴィル氏の哲学エッセイ「recommencer」を翻訳していた時に、辞書を引いた単語の中には赤字の単語も少なくなかった。その時、普段からもっと単語を積極的に覚えておくべきだったと後悔した。
旺文社のNouveau Petit Royal(ヌーボー・プチ・ロワイヤル)をこの単語拡充作業の辞書にしたのは、当初ははっきりとした自覚はなかった。しかし、使っていると確かに使いやすいのだ。自分なりに後付的に考えてみると、その理由の1つは動詞が他動詞、自動詞、間接他動詞、代名動詞という風に〜英語で言えば5文系に沿って構文を理解できるように〜わかりやすく、明示されていることだ。間接他動詞は動詞と目的語の間に前置詞が入るタイプである。私が35年前の大学生時代に使っていた同じ旺文社の分厚いロワイヤル仏和辞典の場合、動詞のタイプの判別が小文字でvt とかviみたいにアルファベットでごくごく小さく記載されているだけで、日本の読者にははっきりと頭に入ってきにくかった。これは旺文社の中でコツコツ辞書を進化させるべく、過去の出版物に安住せず、地道に改善に取り組んできた結果だと思う。
Nouveau Petit Royal(ヌーボー・プチ・ロワイヤル)を作った人々は「総合的学習辞典」を目指して編纂したと冒頭で述べている。辞書と言えば単に引くだけでなく、読んだり、動詞活用を学習したりと「総合的に」活用できるべきものだ、との信念が旺文社のプチ・ロワイヤル仏和辞典の時代から生きているのである。実際、私は最近になってよく巻末の動詞活用表を参照している。かつてはほとんど触ったことすらないページだった。私は今、フローヴェールの小説「ブヴァールとペキュシェ」の二人のように辞書を筆写する作業に春以来取り組んでいて、大学ノートは今、12冊目である。
■語学の参考書と辞書の関係
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202012240631014
■吉田正俊著 「理解しやすい英文法」(文英堂) 大学受験だけでなく、英語をもう一度おさらいしたい時に便利な参考書
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201609110149420
■ニュースの三角測量 村上良太
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201304281127180
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