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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2021年01月01日11時37分掲載
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コラム
マリーヌ・ルペンの年末のメッセージ 2021年はフランスの政治に重要な1年になるだろう
かつて国民戦線(FN)だった極右政党は今、国民連合(RN)に名前を変えて、党首にマリーヌ・ルペンを頂き、政治勢力の躍進を続けている。2022年はフランスの大統領選の年であり、2017年にエマニュエル・マクロンに敗れた彼女は来年こそと勝負をかけてくるだろう。その気持ちは12月の暮れに彼女が発信したメッセージに込められていた。その言葉の中で、2020年は悲惨な年であったが、COVID−19以上に犯罪者のイスラミスト勢力が繰り返しフランスで仲間をテロで斃したと強調した。彼らにフランスを壊させてはならないと訴え、2021年には地方選挙があるので、皆さんの意志を見せてくださいと訴えた。
マリーヌ・ルペンは父親のジャン=マリ・ルペンにとっての枷となった悪魔的なイメージを払拭するために、ソフトな路線を目指し、言葉遣いも父親の言葉と対照的に、オブラートに包むようになった。とはいえ、その核心部分は変わらないように私には思える。そのことがイスラム過激主義の戦士たちにとっても、マリーヌ・ルペン大統領の誕生を切望させることになっている理由であると想像される。というのも、風刺漫画のシャルリをテロの標的としたときも、フランスの分断が彼らの狙いだったからだ。今やイスラム教はフランスの第二の宗教であり、正確な人数は不明だが、イスラム教徒は500万人以上にのぼると言われている。テロリストへの非難であっても、そこにイスラム教への批判のニュアンスが付随すると、どうしても緊張が社会を覆っていく。そして、フランスがイスラム過激派や彼らをコントロールしている外部の国や勢力との戦争に巻き込まれれば巻き込まれるほど、フランスの国力は衰退する。今のアメリカがそうである。ジョージ・W・ブッシュがアフガニスタンとイラクで長期間戦争と紛争に米軍を加担させたために米経済は破綻し、未曽有の財政難となった。イスラミストたちはそこを狙って、つまりマリーヌ・ルペンを2022年の大統領選で勝たせるために、2021年にテロをさらにフランスでしかけてくるかもしれない。そして、もしマリーヌ・ルペン大統領が誕生した時、ドイツとフランスの関係も悪化する可能性は十分にあるだろう。
これらは推測に過ぎないが、マリーヌ・ルペンの年末のメッセージを何度も聞きながら、そうした悪しき未来の可能性が浮かんできたのである。もちろん、そうした未来がないことを望む。フランスが没落して最も利益を受けるのはイスラミストたちと米国だろう。文化的な寛容さを失ったフランスはもはや世界の文化的中心にはなり得ない。その代わりにニューヨークが再び復帰することになるかもしれない。私はマリーヌ・ルペンが現在の事態を「戦争」と評したことに暗い予感を得た。イスラム過激派の戦士たちはこのビデオメッセージを見ているはずである。もし、マリーヌ・ルペンが本当にライシテ(宗教と政治の分離)を尊重し、憲法と人権を尊重する上でイスラム過激派のテロリストを非難するのであれば、テロリズムとは関係のないイスラム教徒の住民に対しては逆に包容力のあるメッセージをその2倍、強く打ち出していく必要がある。
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