ゲノム編集を遺伝子組み換えと同等とみなし、遺伝子組み換え作物・食品として規制する国・地域と、そうではない国・地域とに世界は大きく分かれている。前者は欧州、後者は米・日などだが、ここにきて中国やカナダが後者に一歩踏み出す動きが出てきた。(有機農業ニュースクリップ)
◆中国の研究グループ 規制きゲノム編集除草剤耐性作物開発に前向き
中国・華中農業大学などの研究グループは3月24日、外来遺伝子を組み込まないゲノム編集による除草剤耐性作物は、従来の遺伝子組み換え作物のような規制がなく、開発期間や費用の点で有望とする論文を発表した。すでにいくつかのゲノム編集除草剤耐性作物が開発されているという。
1996年に除草剤耐性遺伝子組み換え作物の商業栽培が始まって以来、グリホサートなどの除草剤の使用が急激に増加したが、こうしたゲノム編集除草剤耐性作物の登場は、必然的に除草剤の多用を招く可能性がある。
日本や米国は外来遺伝子を組み込まないゲノム編集作物は、遺伝子組み換えではないとして従来の遺伝子組み換え作物のような審査や栽培規制から除外した。カナダ保健省は3月、同様の枠組みを提案し、英国もその方向へ進もうとしているという。新たな除草剤の大量使用の懸念が生ずる。
・Plants, 2021-3-24 Herbicide Resistance: Another Hot Agronomic Trait for Plant Genome Editing https://www.mdpi.com/2223-7747/10/4/621/htm#B153-plants-10-00621
・GM Watch, 2021-4-8 The future of agricultural gene editing: More herbicide-tolerant crops sooner https://www.gmwatch.org/en/news/latest-news/19753
・Health Canada, 2013-3-25 Consultation: Proposed new guidance for Novel Food Regulations focused on plant breeding https://www.canada.ca/en/health-canada/programs/consultation-guidance-novel-foods-regulation-plant-breeding.html
◆カナダ保健省 ゲノム編集食品をGMから除外
カナダ保健省は3月25日、ゲノム編集技術を使い外来遺伝子を組み込まない場合(SDN−1)について、遺伝子組み換えではないとする見解を明らかにし、意見公募を始めた。
すでに日本でサナテックシードのゲノム編集トマトが「承認」されているが、日本と同様にSDN−1に該当する場合を遺伝子組み換えではないとして、遺伝子組み換え食品規制の枠外に置き、開発者の自主的な届出を奨励するというもの。これに対してカナダの反GM団体は反対を表明したという。
・Health Canada, 2013-3-25 Consultation: Proposed new guidance for Novel Food Regulations focused on plant breeding https://www.canada.ca/en/health-canada/programs/consultation-guidance-novel-foods-regulation-plant-breeding.html
(参考) ・厚労省, 2017-4-12 ゲノム編集技術について https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000162742.pdf
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