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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2021年04月19日21時43分掲載
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トリチウム汚染水についての「国民の理解」が広がれば…… Bark at Illusions
東京電力福島第1原子力発電所でたまり続けるトリチウムを含む放射能汚染水の処理について、日本政府は希釈して海に放出する方針を固めた。東電や国家の負担軽減を最優先に考えた結果だろう。放射性物質トリチウムについては人体に有害な影響を与える科学的根拠が示されている。また地元漁業者などを中心に反対の声も強く、安全面からも民主主義の観点からもあり得ない判断だ。しかしマスメディアが懸念しているのは “風評被害” だけで、トリチウムについては人体にほとんど影響がないかのような印象を与え、問題は政府の説明不足、あるいは「国民の理解」が不足していることだと説明している。
例えば、ニュースウオッチ9(NHK、21/4/9)は、トリチウムは「通常の原子力施設でも発生し、各国の基準に基づいて、濃度を薄めて海や大気などに放出されてい」るとか、今問題になっているトリチウム汚染水を実際に放出する際には「基準の40分の1」の薄めるとか、それは「WHO・世界保健機関が示す飲料水の基準のおよそ7分の1」だなどと述べて安全性に問題がないかのような印象を与えた後、漁業への影響を心配する全国漁業協同組合連合会会長や福島県漁業者の声を紹介。そして政府の “風評被害” 対策を紹介した後、キャスターが
和久田麻由子:「地元の皆さんが風評被害を懸念されるのは当然だと思います。でもこれ、福島だけの問題ではないですよね。福島以外の人こそが、正しく理解すること、これが欠かせないと思います」 田中正良:「そうですね。科学的で透明性の高い情報を、国内だけでなく、海外にも活発に発信していく必要があると思います」
と述べてニュースを終えている。 毎日新聞(21/4/8)も、トリチウムについて、
「放射線のエネルギーは弱く、紙1枚でも遮れると言われている。……自然界では99%が、トリチウム水という液体で存在し、空気中の水蒸気や雨水などに含まれている。体内に取り込んでも、尿と一緒に排出される。排せつによって量が半減する『生物学的半減期』は10日ほど、トリチウムを含む有機物の場合は約40日〜1年になる」
などと説明し、
「風評被害の最も根源的な問題は、汚染水と汚染処理水、処理水の違いが、多くの国民に理解されていないことだ」、 「風評被害は結局、消費者が買うかどうかの問題で、消費者が処理水について理解しているかどうかが大事になる」
などと述べて、政府に「理解深める説明」を求める福島大学・小山良太教授の見解を紹介している。
しかし日刊ベリタ(19/11/23)でも紹介したように、トリチウムは人体にとって非常に危険な物質であることが明らかになっている。 トリチウム(T)は、水素原子(H)と化学的性質が変わらないため、水素と置き換わることによって、「いろいろな原子と結合する」が、「特に有機高分子化合物と結合して有機結合型トリチウムOBT」になると、「体の一部となるので長く体内にとどまり、大変危険である」(渡辺悦司・遠藤順子・山田耕作 『放射線被爆の争点』 緑風出版)。「細胞の構成要素、特に遺伝情報を担うDNA中の水素とも置き換わる」ことで、「ベータ崩壊により……細胞が損傷される」(同)。「ベータ崩壊で放出される電子のエネルギー」は小さく射程も短いが、「局所的な被曝となり狭い領域に集中的な被曝を与える」ことになる(同)。またベータ崩壊した後のトリチウムはヘリウム3に変化するが、その変化がDNA中の水素と置き換わったトリチウムに起こると、DNAの二重らせんを支える基本構造となっている水素結合(この場合はトリチウム=三重水素の結合)が切断されて「DNAの分子構造が壊れ、遺伝情報が失われたり書き換わってしまうため、いっそう危険である」(同)。 「放射線のエネルギーは弱く、紙1枚でも遮れる」という毎日新聞の説明は、外部被爆については正しいかもしれないが、内部被爆に対しては不適切だ。また「通常の原子力施設」でも「海や大気などに放出」しているというニュースウオッチ9の説明は、安全を示す根拠にはならない。原発を運転するにはトリチウムをその濃度で放出せざるを得ないから放出しているのであって、基準以下なら人体に影響がないことが科学的に立証されているわけではない。実際、トリチウムを多く放出する原発や核燃料再処理工場周辺では、多くの健康被害が報告されている。例えば、日本国内の原発の中でトリチウムの放出量が最も多い玄海原発が立地する佐賀県玄海町では、白血病による死者数が全国平均の6倍以上、佐賀県平均の約4倍となっている(渡辺悦司・遠藤順子・山田耕作、同)。もちろん、複雑な自然界においてトリチウムと健康被害との因果関係を立証することは困難だが、前述の科学的根拠から、それを疑うべきだろう。
トリチウムについての「正しい理解」が広がれば、おそらく海洋放出に対する反対の声は一層高まり、政府は計画の撤回を余儀なくされるだろう。 「民主主義」と言われる国家で、マスメディアがどんな役割を果たすのか、注目だ。
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