4月22日、NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)などの主催で、政府が今国会に提出した入管法改定案への反対を訴えかける院内集会が開催された。同集会に登壇したミャンマー人女性やクルド人男性からは、難民申請者への強制送還を促す本法案に対する不安な心境が語られた。
本法案の詳細について説明した東京弁護士会の児玉晃一弁護士は、新設される監理措置制度について、「政府はあたかも前より良い制度ができるかのように言っているが、決してそんなことはない」と断言する。児玉弁護士は、同制度について「今までの仮放免制度と変わらない」とした上で、「入管は上級職の主任審査官が審査するから大丈夫だと説明をしているが、同じ組織内の上司が目を通しているから大丈夫というものではない」と、その問題点を語った。
監理措置制度は、監理人の監督の下に被監理者の収容を解くものであるが、監理人には被監理人の生活状況等を報告する義務が課される。これについて支援者などからは「責任が重すぎて監理人の“なり手”がいないため、却って長期収容を招く」「支援者がもし監理人になるようであれば、信頼関係の破壊に繋がる」などの意見が挙がっている。
全国難民弁護団連絡会議の大橋毅弁護士は、「これほど多くの団体が反対しているのは、この法案が条約に違反し、人権を侵害するような内容だからである」と指摘する。重ねて「この法案は政策として妥当かどうかということではなく、専門家から見たら違法なものである」と強調した。実際本法案については、国連機関からも「国際人権法違反」との見解が示されている。
集会で発言したミャンマー人の女性。難民申請中の彼女は、ミャンマー国軍による少数民族への弾圧について「70年近く続いている」と話す。その上で、クーデターが発生しているミャンマー国内の情勢を踏まえ、「私が今ミャンマーに送り返されれば、逮捕され、死刑にされてしまう」と、不安な心境を涙ながらに語った。
また、高校進学後に一人で入管への難民申請手続きに赴くようになったと語るクルド人の男性。彼は、入管職員に「あなたは日本の学校にいても就職できない。時間とお金の無駄だから自分の国に帰って」とはっきりと言われたという。その後、日本での生活を認めてもらえるよう、成績を上げて再び入管に行ったところ、今度は「どんなにがんばっても意味がない」と言い放たれることとなる。このクルド人男性は、「私はクルド人であることに誇りを持っている。クルド人難民として認めてほしい」と強い口調で訴えかけた。
集会には、立憲野党の国会議員も参加。立憲民主党の辻本清美衆院議員は、「難民として苦しんでいる人たちの命や人権を守るのが政府の役割であるのに、政府は命を奪い、人権をないがしろにするような態度を取り続けている」と、政府の姿勢を疑問視する。また、日本共産党の藤野保史衆院議員は、監理措置制度について「監理人に義務を課し、入管庁の管理下に置こうとしている」と指摘。「民間の力で支えてきた入管行政をめぐる風景を大きく変質させるものだ」と、警鐘を鳴らした。
集会の最後には、移住連の鳥井一平代表が「入管がなぜ人の人生を決めるんだ。入管がこの社会の在り方を決めていいのか」と、恣意的に運用される現状の入管行政に抗議の声を上げた。また、「反対の先にある、誰一人取り残されない社会を政治の場で議論してもらいたい」と、国会議員に対して訴えかけた。
主催した実行委員会からは、同法案に反対する署名が10万6792筆集まったとの報告があり、集会終了後にそれらの署名が法務省に届けられた。移住連では、入管法改悪に反対するべく、国会前において座り込みを実施中。法案が審議されている間は、同行動を継続する予定であるという。
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