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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2021年08月01日20時52分掲載
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「自由で開かれたインド太平洋」で、日本は東アジアの平和と発展を損ねる愚を繰り返すのか Bark at Illusions
日本政府がアジア太平洋からアフリカに至る地域で「ルールに基づく国際秩序」を構築し、「法の支配」や「航行の自由」といった原則を定着させるために提唱したという「自由で開かれたインド太平洋」構想。ニュースウオッチ9(21/6/30)は、この構想立案の「キーマン」となった外務省の市川恵一北米局長を取材した。
「国際社会で日本の存在感が低下していることへの危機感」があった市川恵一は、「日本のプレゼンス」を「国際社会の中で高めていく」ためには、「一貫したメッセージ」が重要だと考え、国家としての日本が目指す「ビジョン」を「言葉」と「具体的行動」で示そうと考えたのだと言う。 「自由で開かれたインド太平洋」構想は、中国包囲網だと一般に受け止められているが、市川恵一は次のように否定する。
「最初から中国を排除してるわけではないのです。民主主義対権威主義ということをよくバイデン大統領もおっしゃいます。単純な二項対立の下で国際社会を規定するというのはですね、決して有用なやり方ではない。外交は仲間を作る作業だと……アメリカに助言してくというのも、このインド太平洋に位置する日本の大事な役割だとは思ってます」
そして、
「自由で開かれた国際秩序を実現してくために様々な外交努力をしていくと、15年後も、あるいは20年後も、日本としてこの地域で非常に重要な役割、あるいはリーダーシップを振るっていくことができる」
と主張する。 しかし構想立案の「キーマン」の思惑が如何なるものであれ、「自由で開かれたインド太平洋」を牽引する日本政府や米国政府が発する「言葉」や「具体的行動」からうかがえるのは、中国の発展を抑え込もうとする意図だ。
米国政府は中国からの輸入品に対する高い関税や、先端技術を扱う中国企業への輸出禁止措置などの制裁で中国経済の発展を阻害しようと試み、AIや半導体などの最先端技術分野の供給網整備を「同盟国」や友好国の間で進めるなど、中国を経済的に排除しようと躍起になっている。今年6月に行われたコーンウォールサミットでは、日本と米国が中心となって対中国での結束を国際社会に向けて印象付け、新型コロナウィルスワクチンの供給やインフラ整備などの中低所得国への支援策に至るまで、中国への対抗を意識したものとなった。
また、米国は既に400以上の軍事基地で中国を包囲し、中国が交易を行う海域を封鎖する演習を行うなど、中国を軍事的に威嚇しているが(CounterPunch、20/8/4)、さらに九州・沖縄からフィリピンを結ぶ「第1列島線」でミサイル網の整備を計画するなど(朝日、21/7/8)、中国に対する軍事的包囲網の強化に取り組んでいる。日本政府が南西諸島で行っている自衛隊の軍事基地建設も、念頭にあるのは中国だ(レイバーネットTV、21/7/21)。 また中国を念頭に置いた軍事訓練も活発になっている。今年に入って日米の共同軍事訓練が著しく増加しているほか(朝日、21/6/16)、オーストラリアやインド、欧州諸国などの外国軍と自衛隊の共同訓練も近年増加傾向にある(日経、21/6/9)。今年5月には日米豪にフランスを交えて(朝日、21/5/16)、今月は日米豪に英国を交えて(日経、21/7/16)、いずれも「自由で開かれたインド太平洋」の維持を目的に共同軍事演習が行われている。
「自由で開かれたインド太平洋」構想の本質が、中国に対する経済的・軍事的な封じ込め策であることは明らかだ。
この構想を広めようと、日本政府は茂木敏充外務大臣が世界各地を歴訪するなど、積極的な外交を展開している。 かつて、西洋文化を武力で人々を圧迫する「功利強権」の「覇道文化」、東洋文化を「仁義道徳」を本質とする「王道文化」と称し、欧米列強の植民地支配からアジアを開放するためにアジア民族は王道文化を基礎に連合すべきだと説いた中国革命化の孫文は、「日本国民に対する希望は、日本政府が英米の尻馬に乗って支那を圧迫せぬ様、努力されたい」と述べ、欧米列強の帝国主義に倣って東アジアの平和と発展を損ねようとする日本政府を批判したが、当時とは全く状況が異なるとはいえ、現在の日本は「英米の尻馬に乗って」どころか、自ら率先して米国の覇権のために東アジアの緊張を高めようとしているのではないか。
市川恵一は構想によってアジアからアフリカに至る地域で「リーダーシップ」を発揮できると述べているが、残念ながら日本は中国、韓国、朝鮮、ロシアなど、近隣のいずれの国とも良好な関係を築けていない。過去に行った侵略や植民地政策に対するの日本政府の不誠実な対応や、中国やロシア、朝鮮を仮想敵国とした日米の軍事同盟が、妨げとなっているのだろう。近隣諸国とすらうまく付き合うことができない日本が、アジアからアフリカに至る広大な地域でリーダーシップなど発揮できるだろうか。まずはこの点から改める必要があるのではないか。
第二次世界大戦での敗北によって帝国主義者間の競争から脱落し、それまでの犯罪を咎められて反省を強いられた日本は、過去に犯した罪と真摯に向き合い、被害者に対する償いを十分に行うことで、今度は欧米の帝国主義的な振る舞いを批判し、世界を公正で対等な社会へと導くことに貢献することができる。そして、そうすることによってこそ、日本は国際社会での信頼を得て、望むのであればリーダーシップも発揮できるようになるのではないだろうか。それとは逆に、過去の侵略行為を否定し、米国などともに再び帝国主義的な行動を取るなら、日本は大日本帝国時代の犯罪を人質に欧米から都合のいいよう利用され、国際社会からも見下さることになるだろう。
「今後日本が世界文化の前途に対し、西洋覇道の鷹犬となるか、或は東洋王道の干城となるか、それは日本国民の詳密な考慮と慎重な採択にかかるものであります」
100年前に孫文が日本市民に対して決断を迫ったこの言葉と本質的に同じことが、現在の日本の市民に問われているのではないか。
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