・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・アジア
・国際
・イスラエル/パレスチナ
・入管
・地域
・文化
・欧州
・農と食
・人権/反差別/司法
・市民活動
・検証・メディア
・核・原子力
・環境
・難民
・中東
・中国
・コラム
提携・契約メディア
・AIニュース


・司法
・マニラ新聞

・TUP速報



・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus

・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2025年03月30日
・2025年03月29日
・2025年03月28日
・2025年03月27日
・2025年03月26日
・2025年03月23日
・2025年03月22日
・2025年03月21日
・2025年03月19日
・2025年03月18日
|
|
2021年08月21日20時41分掲載
無料記事
印刷用
検証・メディア
世界的なワクチンの供給不足は資本主義社会の失敗 Bark at Illusions
デルタ型の変異株の影響で新形コロナウィルスの感染者数が世界中で急増する中、200人以上の科学者や市民社会グループが、バイデン政権への公開書簡で「ワクチンの生産と供給を早急に拡大しなければ、さらに何百万人もの人々が感染し、命を落とすことになる」と警告し、ワクチンの生産を拡大するよう勧告した。曰く、「デルタ型の出現」によってもたらされたアジアやアフリカなど、ワクチンの入手が困難な地域での感染率の急増は、新たな変異株の出現リスクを浮き彫りにしており、今後現在のワクチンに耐性のある変異株が出現する可能性もある。それは「米国やその他の地域におけるパンデミックに対するこれまでの進展を脅かすものになるでしょう」。
新型コロナウィルスワクチンについては、裕福な国などで所定の接種回数を完了した人に対する追加接種や子どもへの接種が行われる一方で、依然として多くの国でワクチンの入手が困難な状態が続いており、低所得国では1回以上ワクチンを接種した人の数は人口の僅か1.2%にとどまっている。このワクチン格差を解消して世界中にワクチンを行き渡らせるために、世界貿易機関(WTO)では新型コロナに関連するワクチンや医薬品の知的財産権を一時的に放棄するための議論が昨年10月以来続いているが、7月に行われた会議でも合意に達することができなかった。100カ国以上が特許の一時放棄に賛同しているにもかかわらず、日本やEUなどが反対しているからだ。 なぜ日本やEUは特許の一時放棄に反対するのか。その理由について、朝日新聞(21//5/19)は次のように説明する。
「ワクチンの開発には巨額の投資が必要だ。製薬企業は作り方の特許権を持つことで他社にまねされず製造や販売ができるし、長期的な投資もできる。特許権を手放すことになれば、ワクチンを開発する動機がうすれ、将来の技術革新に影響しかねない」、 「特許権を一時放棄するだけでは、供給量が増えないという意見も根強い。ワクチンの製造には高度な製造施設や機器、技術を持った人材が必要だからさ。途上国の製造能力には限界があり、先進国からの輸出を増やす方が現実的な近道だとする見方だ」
朝日新聞に限らず、マスメディアは似たような理由を挙げて、特許の一時放棄に反対する政府や製薬大手企業にも理があるかのような印象を与えている。 しかしBark at Illusions(21/4/18)でも紹介したように、新型コロナウィルスワクチンの開発資金は大部分が政府などによる公的資金によって賄われた。日本にもワクチンを供給しているモデルナ社は、ワクチン開発の100%が公的資金だったと認めている(Democracy Now、21/1/1)。
生産体制についても問題はない。インドと共にWTOで特許の一時放棄を提案した南アフリカ共和国のWTO代表団のムスタキーム・デ・ガーマ氏(Democracy Now、21/2/25)は、欧米などで消費されている他の医薬品の多くは実際に「途上国」で製造されており、メッセンジャーRNA(mRNA)技術を用いたファイザー社やモデルナ社などのワクチンも、製造方法が共有されれば、「途上国」でも製造することができると主張している。なぜなら、mRNA技術は新型コロナウィルスワクチンへの応用は初めてのことだが、mRNA技術自体は新しいものではなく、科学的基礎や技能は「途上国」にもあるからだ(同)。
資本主義社会では金儲けが大企業経営者や資本家にとっての最大の動機付けとなっているから、「特許権を手放すことになれば、ワクチンを開発する動機がうすれ、将来の技術革新に影響しかねない」というのは嘘ではないだろう。
しかし、資本主義社会でも、全ての人が金儲けを原動力に生きているわけではない。 ポリオワクチンを開発した米国のジョナス・ソーク博士は、「特許は誰のものか」と記者に尋ねられ、次のように答えた。
「特許はありません。太陽の特許を取れますか?」
ジョナス・ソークのこの有名な言葉は半世紀以上前のものだが、科学者の探究心は現在でも資本家のように金儲けによるものではないと信じたい。 また特許の一時放棄については、反対する日本やEU諸国でも過半数の市民が賛成している(アムネスティ・インターナショナル日本、21/5/13)。
新形コロナウィルス対策で各国が苦労する中、マスメディアはコロナ危機に対応する上での民主主義国家と非民主的国家の体制上の優劣について時々論じているが、こうした市民の意見が政策に反映されていないことを問題にすべきではないだろうか。つまり、日本や欧米などで現在の危機にうまく対応できないなら、それは民主主義が問題なのではなくて、民主主義が機能していないことが問題なのだ。
ワクチンを販売する製薬大手は既に莫大な利益を上げており(時事、21/8/6)、その最高経営責任者(CEO)ら9人が保有資産10億ドル以上の「ビリオネア」になったそうだ。「9人の資産総額は約193億ドル(約2兆1000億円)」で、「約7億8000万人が住む低所得国の全員に1回以上ワクチンを接種できる額」だという(赤旗、21/5/23)。公的資金を基にワクチンを開発しておきながら、ほんの幾つかの企業がその技術を独占し、極僅かの人間が巨額な利益を上げている。こんな不正が許されてもいいのか。 現在の経済システムでは極少数の億万長者を作ることはできるが、たとえ手段があったとしても必要なものを全ての人に公平に分配することができない。 民主主義と資本主義は本質的に相容れないものだ。 人類がコロナ危機を克服するために、資本主義から民主主義を取り戻さなければならない。
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|





|