厚労省・遺伝子組換え食品等調査会は9月17日、筋肉量を増やしたゲノム編集のマダイ(可食部増量マダイ(E189-E90系統))について「「届出」に該当すると判断された」と発表した。公表された資料では、オフターゲットや安全性への言及はほとんどなく、実質的な安全性の審査が行われたとは思われない。この「届出」の「受理」により、世界初となるゲノム編集魚の流通にゴーサインが出た。(有機農業ニュースクリップ)
このゲノム編集のマダイは、京都大学・木下准教授らの研究グループが開発したもの。木下准教授も共同創業者のリージョナルフィッシュ株式会社が、自社の陸上水槽を使った養殖施設で生産し、パートナー業者を通して流通させるという。同社はまた、表示を徹底してパートナー飲食店で提供するとしている。
農水省は17日、「ゲノム編集技術の利用により得られた生物の使用等に関する情報提供書」と「ゲノム編集技術の利用により得られた生物の使用等に係る確認結果」を公表した。これらの公表情報によれば、ゲノム編集のマダイは、近畿大学が野生種から選抜した系統の受精卵に、クリスパーキャス9RNAとガイドRNAを導入して、筋肉の増強を抑制しているミオスタチン遺伝子の14塩基を欠失させることで筋肉量を増量させたとしている。こうして得られた親世代(T0)から集団交配させたF1世代の2個体を親としてF2世代を得たという。F1世代、F2世代で全ゲノム解析を行い、導入したRNAの複製物がゲノムに挿入されていないことを確認したとしている。
標的外の遺伝子を改変するオフターゲットについて、厚労省の公開資料では、ソフトウェアによる解析で得られた10か所の候補配列の解析の結果、いずれもオフターゲット変異がないことが確認されたとしている。
農水省の公表資料によれば、陸上施設の水槽からの逃げ出しや受精卵の逸出については、トラップを設けて施設外に出ないような措置を講ずるとしている。農水省は、こうした措置により近縁の野生動物と交雑して拡がることは想定し難いとしている。そして、生物多様性への影響は想定し難いと考えられ、生物多様性への影響は想定されないことを確認したとしている。
・厚労省, 2021-9-17 遺伝子組換え食品等調査会議事概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000833477.pdf 可食部増量マダイ(E189-E90系統)公開届出情報
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000833887.pdf
・農水省, 2021-9-17 ゲノム編集技術の利用により得られた生物の使用等に関する情報提供書
https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/tetuduki/attach/pdf/nbt_tetuzuki-9.pdf ゲノム編集技術の利用により得られた生物の使用等に係る確認結果
https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/tetuduki/attach/pdf/nbt_tetuzuki-10.pdf
・朝日, 2021-9-17 ゲノム編集マダイ、食卓へ 同じエサ量でも1.2倍肉付きよく
https://www.asahi.com/articles/ASP9K4Q19P9JULBJ00T.html
なお、17日午後に公表された遺伝子組換え食品等調査会の「議事概要」は、ファイルの作成情報から、前日の16日の17時すぎに作成されたものであることがわかる。このことは、「情報提供書」が「届出」に該当するかを「審議」する遺伝子組換え食品等調査会が、その実、事前に筋書きが決まっている、形ばかりのものであることがよく分かる。
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