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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2021年10月01日20時42分掲載
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米英豪の新たな軍事協力の枠組み発表で、アジア諸国の懸念は「軍拡競争の拡大」、しかし日本のマスメディアは Bark at Illusions
オーストラリア、英国、米国の3か国は、中国に対抗するために、「AUKUS(オーカス)」と呼ばれる新たな軍事協力の枠組みを創設した。その最初の取り組みの一つとしてオーストラリアの原子力潜水艦配備の支援を行い、軍事分野で重要性が高まるサイバー分野や人工知能、量子技術などでの技術協力も3か国で行うのだという。さらに米国はオーストラリアとの外務・防衛担当閣僚会合で、オーストラリアに配備する米軍機の規模拡大などでも合意した。こうした動きは、当然ながら中国の軍事的反応を誘発し、アジア太平洋地域の緊張をさらに高めるに違いない。しかし日本のマスメディアはそうした懸念よりも、米英豪の合意の結果としてオーストラリアとの潜水艦の共同開発の契約を破棄され反発するフランスと、米国の間の同盟関係への影響に関心があるようだ。
オーカスの創設については、日本政府は歓迎の意を示しているが、仮想敵国とみなされている中国はもちろん、他のアジア諸国からも懸念の声が上がっている。マレーシアのイスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は、オーストラリアのスコット・モリソン首相との電話協議で、「アジア太平洋地域の核軍拡競争の触媒になりかねない」と懸念を表明(赤旗、21/9/21)。インドネシア外務省も、声明で「地域での軍拡競争を深く懸念している」と表明している(同)。
オーストラリアに技術支援を行う米国と英国の攻撃型潜水艦は、濃縮度90%越の高濃縮ウランを燃料として用いている。核兵器級の濃縮度の燃料を使用する原子力潜水艦をオーストラリアが保有するようなことがあれば、オーストラリアも加入する南太平洋非核地帯条約(1986年発効)も脅かすことになる。「アジア太平洋地域の核軍拡競争の触媒になりかねない」というマレーシア首相の懸念は大袈裟ではない。 また米国の軍事政策や基地問題に詳しいアメリカン大学のデイヴィッド・ヴァイン教授(Democracy Now、21/9/23)は、オーカスは「非常に不穏で、危険で、無謀で、究極的には人種差別的」な協定であり、今回の発表は、「核戦争」にもなりかねない中国と米国による「想像できない位に熱い戦争」へと導く「新冷戦のほぼ公式な宣言」だと断じる。
ところが、日本のマスメディアの関心は、こうした懸念よりも、事前に何の相談もなく一方的にオーストラリアとの潜水艦共同開発の契約を破棄されたことに反発するフランスと、米国の同盟関係への影響にある。 例えば、NHKニュース7とニュースウオッチ9は、中国によるものを除いて(ニュース7、21/9/16)、オーカスに対する上記のような批判的な見方は一切伝えていない。NHKにとって、オーカス創設によって生じた懸念は、米国とフランスの同盟関係が揺らぎ、対中戦略にも影響を与えるのではないかということで、それについては、専門家やNHK解説者による次のような楽観的な見解を伝えている。
「フランスは南太平洋に領土を持っていて……軍隊も常駐させています。長期的に見ればフランスの利益もこのインド太平洋に非常に大きく依存するようになってきていますから、アメリカやその他の同盟国・友好国と対立をするよりも、協力を深める方がプラスになるだろうと……いう判断が働くと思います。日本としては、このオーカスも含めて様々な枠組みをうまく組み合わせることで、この地域の平和と安定につなげていく努力をしていくことになろうかと思います」(明海大学・小谷哲男教授、ニュース7、21/9/20)
「この事によって両国の関係が決裂するということまではないと見られます。欧米の間で対立していては、中国を利するだけだという認識が双方にあるからです。先週、EU自身がインド太平洋戦略を発表したのも、対中国での各国の連携を重視している表れです。当面、両国のぎくしゃくした関係は続きそうですが、両首脳の電話会談も予定されており、中国への対抗を念頭に、落としどころを模索していくことになります」(NHKワシントン支局・高木優支局長、ニュースウオッチ9、21//9/20)
朝日新聞や毎日新聞、日本経済新聞などは、マレーシアやインドネシアなどの懸念の声は伝えているが、それはあくまで他のアジア諸国の懸念であって、日本にとっての懸念は、やはり中国と対峙する上での同盟関係の結束への影響だと考えているようだ。
「米、同盟関係に亀裂 対中戦略揺らぐ恐れ 仏が大使召還」(朝日、21/9/19) 「豪潜水艦計画転換 仏、米豪に反発強める 通告は数時間前 インド太平洋戦略に影響も」(日経、21/9/20)
オーカスについて、マスメディアは「軍事力を増強させる中国」を念頭にした「安全保障の枠組み」(ニュース7、同)などといった説明をしている。同じように、増え続ける日本の軍事支出も、さらなる “日米同盟” 強化も、南西諸島の自衛隊の軍事基地化も、現在行われている陸上自衛隊全部隊参加の軍事大演習も、英国軍やフランス軍も交えて行われた自衛隊や米軍などとの共同訓練も、日本や欧米では、台頭する中国に対する “抑止力” を強化するためだと考えられている。 しかし、こうした軍事的な措置は、地域に平和と安定をもたらすどころか、中国にさらなる軍拡を促し、米中の対立を一層深め、アジア・太平洋地域の緊張も高めることになる。ヴァイン教授(Democracy Now、同)が指摘するように、中国が同じことをした場合を想像してみればいい。
「もし中国が先週、ロシアやキューバとの協定締結を発表し、キューバに軍事基地を建設し、陸・海・空軍を増強し、極超音速兵器や電磁兵器を含む兵器の開発も行い、キューバとのサイバー空間での諜報活動やスパイ活動、それに宇宙活動を強化し、さらには鉱業契約を結んでキューバへの核兵器級高濃縮ウランの譲渡を伴う原子力潜水艦の建造を行うと発表したとしたら、私たちはどう感じるでしょうか。もし逆の立場だったら、もし私たちの裏庭でこのような同盟に直面したとしたら、私たちはどう感じるでしょうか」
海外侵略や軍拡を続ける米国に、中国が米国と同じような方法で軍事的な圧力をかけることで、北アメリカや中南米、あるいは世界全体に平和と安定がもたらされるだろうか。 米国とその “同盟国” は、中国の軍拡や「海洋進出」を抑止し、地域に平和と安定をもたらすためと言いながら、実際には核戦争にも発展しかねない中国との「想像できない位に熱い戦争」を戦うための準備をしている。マスメディアも含めて、日本社会はそのことに気づき、それを阻止しなければならない。
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