・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・アジア
・国際
・イスラエル/パレスチナ
・入管
・地域
・文化
・欧州
・農と食
・人権/反差別/司法
・市民活動
・検証・メディア
・核・原子力
・環境
・難民
・中東
・中国
・コラム
提携・契約メディア
・AIニュース


・司法
・マニラ新聞

・TUP速報



・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus

・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2025年03月30日
・2025年03月29日
・2025年03月28日
・2025年03月27日
・2025年03月26日
・2025年03月23日
・2025年03月22日
・2025年03月21日
・2025年03月19日
・2025年03月18日
|
|
2021年12月30日20時36分掲載
無料記事
印刷用
検証・メディア
難民の人権問題で批判されるべきは、ベラルーシではなくてEUだ Bark at Illusions
西アジアなどからベラルーシを経由してEUへ向かう難民のことが問題になっている。今年夏以降、ベラルーシとポーランドの国境で大勢の難民が足止めされたことに注目が集まった。ベラルーシを経由する難民の数は、EUが反政府デモやメディアへの弾圧を強めるベラルーシのルカシェンコ政権に対する制裁を科した頃から急増していることや、難民の多くがベラルーシのビザを所有していることから、欧米やマスメディアなどは、難民を利用したEUへの報復だと主張してベラルーシを非難している。
EU諸国は、難民の流入を「安全保障上の脅威」と捉え、
「国家によるテロだ」(ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相)、 「民主的な近隣諸国を不安定化させようとする独裁的な政権による企てだ」(ウァズラ・フォンデアライアン欧州委員会委員長)、 「EUを弱体化させようとする試みだ」(マルガリティス・スキナス委員会副委員長)
などとベラルーシを非難。EUや米国などは「代償を払わせる」と言って、ベラルーシ政府と、難民の輸送に関わった航空会社や旅行会社などに制裁まで発動させた。 マスメディアも、一様にベラルーシ政府を非難している。 例えば朝日新聞(21/12/1)は、「ベラルーシ 人命軽視の暴挙を憂う」と題する社説で、
「安全な地で子どもを育てたい。安定した暮らしを築きたい。そんな切なる願いを抱く移民や難民を危険にさらす言語道断の振るまいである」
とベラルーシを非難。難民急増の背景に、
「ベラルーシ当局の意図があるのは明らかだ」、 「欧州が悩む移民・難民問題を利用し、EUに加盟している隣国を揺さぶろうとしたようだ。ルカシェンコ政権の常軌を逸した非人道性を改めて浮き彫りにしている」、 「EU側との調整もないまま、国境に送り込めば大混乱するのは目に見えている」
などと述べて、
「ベラルーシはただちに無責任な行動を中止し、立ち往生している人びとの命と安全を守るために、国際社会と真剣な対話に臨むべきだ」
と、国境で飢えや寒さなどで苦しむ難民の責任をベラルーシに押し付けている。 他の全国紙も、「ベラルーシ国境の混乱 『難民』を道具に使う非道」(毎日、21/11/23)、「移民の政治利用は許されぬ」(日経、21/11/21)といった具合だ。
欧米やマスメディアは、ほとんど一方的にベラルーシを非難しているけれども、難民を追い返すポーランドやEUの行為は国際法違反だ。催涙ガスや放水車で難民の流入を暴力的に阻止するポーランド政府について、朝日新聞は社説の後ろの方で「ポーランド側でも越境者に対し、国際法の趣旨に沿わない対応も散見される」と述べているけれども、国際法で難民は保護する義務があり、難民の送還や追放は明白な国際法違反(難民条約第33条)だ。 また、大勢の難民がEUに向かうようになったのは、米国や英国、EUなどの軍事侵略や身勝手な外交政策の結果だ。難民の多くは、住んでいた国を欧米諸国に滅茶苦茶にされたイラクやアフガニスタンなど西アジアの出身者で、朝日新聞の説明にもあるように、彼らは「安全な地」と「安定した暮らし」を求めてEUを目指している。たとえベラルーシ政府が難民を意図的にEUに送り込んでいるとしても、その行為は「命のビザ」と称賛されてもいい位ではないだろうか。「代償」を払うべきなのは、ベラルーシではなくて、まさに「国家によるテロ」によって難民が暮らしていた街や村を荒廃させたEUや米国の方だ。 さらに、ベラルーシとポーランドの国境に足止めされている難民全てがEUに入域したとしても、それが「安全保障上の脅威」になどなるだろうか。 足止めされた難民の数は数千人だ。この数は、現在アフガニスタンからイランやパキスタンに流入している難民の数に比べて遥かに少ない。ノルウエー難民委員会によると、1日に5000人ものアフガニスタン人が毎日イランに避難しており、イランだけでEUの全ての加盟国を合わせたよりも多くのアフガニスタン人を避難民として受け入れているという(Democracy Now、21/11/16)。EU全体でたかだか数千人の難民を引き受けることが、EUの「弱体化」や「不安定化」につながるだろうか。ベラルーシは約7000人の難民のうち、EU側が2000人受け入れるという現実的で控えめな提案をしているが、それさえもEU側は拒否している(時事、21/11/19)。 アフガニスタンの避難民については、米軍とNATO軍によるアフガニスタン侵略と無責任で非人道的な撤退が原因だということも付け加えておかなければならない。欧米諸国は国際法に違反してアフガニスタンを侵略して同国を破壊しただけでなく、撤退時にはアフガニスタンの多くの協力者を置き去りにして同国を離れた上に、同国の資産の凍結まで行っている。資産凍結は、アフガニスタンの経済をさらに混乱させ、現地の支援活動にも支障をきたして、さらなる難民を生み出す要因にもなっているだろう。また欧米によるイランに対する経済制裁も、イラン国内に流入するアフガニスタンの難民の支援活動を困難なものにさせているという(Democracy Now、同)。
EUへ向かう難民の問題は、人権重視を掲げるEUの偽善ぶりを示している。
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|





|