・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・アジア
・国際
・イスラエル/パレスチナ
・入管
・地域
・文化
・欧州
・農と食
・人権/反差別/司法
・市民活動
・検証・メディア
・核・原子力
・環境
・難民
・中東
・中国
・コラム
提携・契約メディア
・AIニュース


・司法
・マニラ新聞

・TUP速報



・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus

・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2025年03月30日
・2025年03月29日
・2025年03月28日
・2025年03月27日
・2025年03月26日
・2025年03月23日
・2025年03月22日
・2025年03月21日
・2025年03月19日
・2025年03月18日
|
|
2022年04月08日13時53分掲載
無料記事
印刷用
コラム
フランスの大統領選挙を前に 2017年のマクロン「革命」の5年後は?
今月10日の日曜日にフランスでは大統領選挙の1回目の投票が予定されており、2週間後の24日に決選投票が行われる。今年の大統領選挙は現職のエマニュエル・マクロン大統領が再選されるか、どうかという選挙だが、まず思い出さなくてはならないのは2017年のフランス大統領選は昔ながらの共和党VS社会党の二大政党の支配が崩壊した年だった。マクロンは「革命」という本を出版して、「右でもなく左でもない」と訴えて39歳で大統領に選出されただけでなく、翌月の国会議員選挙でも新党「共和国前進!」を立ち上げて、過半数の議席を獲得した。それほどの激震だった。そういったことから、今回の選挙の私なりの見どころは共和党VS社会党の構図は復活しうるのか、永遠に不可逆の変化だったのか?ということ。もう1つは、左派政党が大きな共闘ブロックを結成して、決戦まで進めるか、ということだった。
ルモンド紙に Ipsos-Sopra Steriaという世論調査会社が今月初めに行った10日の投票に関する世論調査が出ており、それによるとトップはマクロン大統領(現職)の26.5%、2位が極右政党「国民連合」のマリーヌ・ルペンの21・5%、3位が極左政党である「服従しないフランス」のジャン=リュク・メランションの16%、4位が極右候補でTVコメンテーターでもあるエリック・ゼムールの10%、5位が共和党のヴァレリー・ペクレッスで8.5%、6位が環境政党のヤニック・ジャドで6%、7位が共産党のファビアン・ルーセルで3.5%、8位が「抵抗しよう」のジャン・ラサールで2.5%、9位が社会党のアニー・イダルゴで2%…というような結果が出ている。
これを見て、最も印象深いのは2017年まで大統領を頂いていた与党で国会でも過半数を占めていた社会党の急激な衰退であり、その現象は2022年でも引き続き起きているらしい、ということだ。社会党候補のアニー・イダルゴはパリ市長でもあるが、わずか2%なのである。前回の大統領選で社会党候補がわずか6%しか得られずあっけなく敗退したことが記憶に新しいが、今回はさらにその下をいっているばかりか、泡沫政党の候補者よりも少ない。
もう1つ言えることは、前回、「服従しないフランス」のメランションと社会党のブノア・アモンが手を組むことができず左派政党が決戦に残れなかったということである。両者が手を組めなかったのは「服従しないフランス」のメランションが社会党と提携するのをよしとしなかったからだった。そもそもメランション自身はもともとは社会党の国会議員だったが、社会党のネオリベラル路線を嫌って極左政党の左翼党を立ち上げ、今はその系譜をたどる「服従しないフランス」の党首となっている。前回、手を組めなかったことが今回も亀裂となっていて、左派政党が共闘できないことがフランスにおいては有権者にとって不幸としか言いようがない。その結果、ネオリベラル路線で中道政党のマクロンVS極右政党「国民連合」のマリーヌ・ルペンの決戦が2017年の再来となる可能性が高まってきた。つまり、極右候補が決戦に勝ち残る形が常態化してきたのである。そして、この構図にうんざりの有権者は投票を棄権してしまう。今回もある予測では棄権率は30%を超える見通しだ。
もし、環境政党のジャドと社会党のイダルゴ、および共産党のルーセルがメランションに票を集めることができたら、メランションは決戦に残ることが確実に可能なのだ。しかし、それは起きなかった。私はなぜ、みすみす負けることをわかっていながら共闘できないのか?とフランス人の左派の人たちに尋ねてみると、メランション支持者の芸術家の答えはこうだった。
「なぜなら、社会党のイダルゴはメランションよりも、マクロンの方が好ましいと思っているからなのです。マクロンはもともと社会党政権の経済大臣だった人物で、社会党とのつがなりを持っています。一方、イダルゴにとってメランションは左過ぎるのです。そんなわけで、メランションに合流することはないのですよ」
さらに彼はこうも言った。
「そもそも社会党の大統領だったフランソワ・オランド自身が社会党をぶっ壊したかったんです。もっとネオリベラルな党を作りたかったのです」
確かに、国会議員に一度もなったことがないマクロンを政権のアドバイザーに抜擢した上に、内閣改造でマクロンを経済大臣に抜擢したのはオランド大統領(当時)その人だった。
なるほど、これは明快だ。中道政党の「共和国前進!」を、日本の政界の歴史にたとえると、最大野党が日本社会党から民主党へ移行していった時の感じかもしれない。かつて最大野党で140人近い議員を要していた日本社会党の後継である社民党に国会議員は現在、2人しかいない。もちろん、今の社民党とフランスの社会党は同じではないが、政界の動きということでみると類似性を感じるのだ。私は世界で起きている社会党の衰退は、社会党がグローバリゼーションに効果的な政治を打てなかったことにあると思う。
今回の選挙でもう1つ新しい現象は、極右のルペン以外に、もう一人極右候補が台頭してきたことで、エリック・ゼムール候補である。TVでは極右的な辛口コメントで、番組を作る放送局にとっては議論を面白くさせてくれる男なので人気がある。一時はゼムールがルペンを越えて2位につけた時期もあった。今はルペンが2位の座を奪い返しているが、ルペンとゼムールを足し算すれば31.5%にもなることを忘れてはなるまい。アニー・イダルゴはスペイン系の移民の子どもであり、ルペンに勝つためには確実に勝てる候補を当てなくてはならないが、それはメランションではなく、マクロンだと考えているのかもしれない。メランションの支持者たちは、それに憤っているようだ。
かつての共和党VS社会党に代わって、国民連合VS共和国前進!の対決の時代に移行しつつあるとしたら、フランスでも右傾化が一段、進んだと言えるだろう。
村上良太
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|





|