岸田首相を含め、最近の与党や準与党勢力は、中国との戦争に対する備えを強調しています。旧統一教会と懇意だった故・安倍首相が2015年に力づくで制定した有事法制は、麻生副首相の言葉を思い返せば、憲法を改正しないままに時限的な特別法を制定するだけでワイマール憲法を中止してしまったナチスのやり方から十分に学んだと思われます。安倍元首相が暗殺された翌朝の7月9日の主要新聞紙面の同一の見出しも、表現の自由という日本国憲法が保障した重要な価値が、かつての高市総務大臣による選挙中の「公平な報道」という恫喝よりも、むしろ有事法制によって骨抜きにされ、実質的に表現の自由が失われたのだ、ということの証左に私には思えてなりません。戦時中と同様に、ずるずると誰一人責任を取らないまま、同じ深みにはまろうとしているかのようです。
ここで想起したいのは戦時中に日本国民は兵糧攻めにあい、飢餓を体験していたことと、海外の日本兵の大半も食糧不足による衰えで死んでしまったということです。日本に資源を運ぶ船舶はことごとく撃沈されましたが、これは連合軍が行った地中海におけるナチス船舶撃沈によるドイツ軍への兵糧攻めと同じでした。私の叔祖父も兵隊でしたが外地でマラリアで死んでいます。これも栄養不足が関係していると推察されます。また昭和9年生まれの私の母の戦時中の思い出は、空襲の恐怖と激しい空腹の毎日でした。教員だった祖父が結核で亡くなって、祖母が米機B29による空襲の下を子供たちの手を引いて岡山県の田圃を走り回って逃げていたと何度も聞いています。こんな経験を子供たちに二度とさせてはならないのです。日本であれ、中国であれ、韓国や北朝鮮であれ、そうです。ホワイトハウスの参謀たちがいかに戦争を掻き立てても、米国の利益と日本の利益は全く異なるものです。
もし、米国を中心とした集団的自衛権を訴える国々に日本が参加して、中国と戦争をした場合、中国から輸入している食料がまず入ってこなくなります。それから、中国によって取り込まれてしまったアジア各地の国々も、もし中国の指示に従えば、日本へ食糧輸出をしなくなるかもしれません。その一方で国内の農村では農民が高齢化して、戦争がなくても明日の農業はかなり危機にあります。
「いや、米国やオーストラリアが日本に食料を輸出してくれるから心配はないよ」と言うかもしれませんが、米国が本当に日本に食料を輸出してくれるかどうかは未知数です。日本国民の生命をこのような仮定のもとに賭けてはいけないのです。もし中国と戦争が来年初頭に始まったとしても、米国は2025年に次期大統領になれば、TPPの時にそうだったように自分から仕掛けておきながら、早々と単独講和を中国と結んで戦争から離脱してしまうかもしれません。さらに、最悪の場合は親中国の大統領になる可能性もあるのです。そうなると日本は単独で中国と戦いを続けなくてはならなくなりますし、講和条約を結びたくても中国が拒否する可能性があります。中国が日本との講和条約に応じるためには日本の「国体」を永久に変えることを要求するかもしれません。講和条約が締結されなければ何十年でも戦争は継続します。核の使用を含めた戦争を20年、30年継続できる覚悟が必要です。税額も現在の比較にはならない程高騰します。それでも戦争をする意味があると考えるなら、開戦すべきなのです。
私が危惧を感じるのは今の与党の議員の多くが政治家の二世、三世で、飢えの経験はおろか、世間的な苦労などほとんどしたことがないようなお坊ちゃん、お嬢ちゃんばかりに見えることです。こうした公家的な性質の人々は、食料が途絶えた時、どんな苦しみがあるかを感覚的に理解できないのではないかと思います。勇ましい言葉を弄ぶものの、いざ戦争になり地獄図が展開すれば責任逃れをするのは目に見えています。今統一教会がらみで言い訳がましいコメントを与党議員が次々とさらしていますが、戦争となれば、この100倍の責任逃れをするのは明白です。自民党議員の杉田水脈氏は毎日新聞の見出しでは「杉田水脈氏、旧統一教会関連団体『定義が分からない』」です。驚くことでは全くなく、これが今日の我が国の与党の政治家の水準なのです。世界の先進国ではありえない政治家の低い水準です。日本人に自尊心があれば、そんな発言は決して許さないはずです。主要紙のチェック機能が皆無に近いので、与党の政治家たちも安心して日本国民をなめきって、こうした発言が悠々とできるのです。主要紙も日本人の多くが外国の新聞を読むことができないので、安心してさぼれます。
戦後の日本人は戦時中と戦後に政治家たちや参謀たちの責任逃れを散々見ていましたので、人間を見る目が研ぎ澄まされ、安易に政治家の言葉を信用しなかったものですが、れいわの日本人はそうした過酷な経験に基づく洞察力、人間観察眼がほとんど失われ、広告代理店の作りだすイメージにいとも簡単に騙されています。強いものになびく政治家は、戦争の勝利者にたやすくなびきます。これも1945年を見れば明らかです。国民が何百万人死のうと関係ない、ということでしょう。
戦後、日本は紛争の解決は外交で、平和に行うことを国是にしてきましたし、その憲法は現在も健在です。健在であるばかりでなく、それこそが唯一の東アジアが生き残る道に他なりません。たとえ中国政府がいかに権威主義的な政治を行っていたとしても、安易に戦争を行えば前回のような15年程度では終わらないかもしれないのです。
※【“統一教会”と政治家】杉田政務官は過去“支援は何の問題もない”投稿 その真意は… (日テレ)
https://www.youtube.com/watch?v=GD4O3-k9aRU
※杉田水脈議員 総務政務官就任で早くも過去発言が続々問題視「統一教会の支援問題ない」
https://news.yahoo.co.jp/articles/ba77d7889aa9eb06500d0c335d5cad2d8910e03d
※杉田水脈氏 旧統一協会関係団体で講演 19年 自民との関係に批判の声 (赤旗) https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-07-16/2022071602_04_0.html
|