新聞社が政府とその関係組織から広告収入を得ることで経営を続けてきたことが、権力への追従というジャーナリズムとは言えない新聞へと堕落してしまった元凶だということが鮫島浩氏やその他のブログで浮き彫りにされています。ジャパンタイムズでも経営難からそういうことになった話をどこかで読んだことがありました。第二次大戦中は大本営発表の大戦果などの報道で、多少なりとも読者を増やして経営を維持していた歴史を振り返ると、こうした新聞社は、確実に同じ道を進んでいます。
では、それを避けるためには何が必要かと言えば、厳しいことでしょうが、紙の新聞が最盛期だった頃の経営モデルを刷新して、インターネット時代の新聞に全面的に切り替え、政府の金に依存しない経営に切り替えることが必要でしょう。はっきり言えば、ほとんどの社員が新聞社を去ることになると思いますが、残すべきなのは記事が書ける記者たちが30人程度は必要です。従業員4000人くらいの企業だとすると経理や庶務なども併せて多くても100〜200人まで減らす必要があるかもしれません。放置しても今のままのペースで減少が続けば20年以内に新聞はゼロになると言う見込みもあり、決断が必要です。厳しいことを書くようですが、結局、決断を1日でも早くして残すべきものを残す、ということが新聞社のみならず、日本に暮らす人々の命を救うと考えてほしく思います。あるいは、逆に新聞社を飛び出して新しい媒体を作る、という動きがあってもいいでしょう。
インターネットがなかった紙の新聞の時代の全盛期は、新聞は地方と地方の人々を結びつけることができる(TVとラジオを除くと)ほとんど唯一の貴重な媒体でしたが、今日ではどれだけ離れていてもSNSで個人同士で簡単にコミュニケーションができ、また様々な組織が情報を発信しているので、そうしたネットであふれる情報は新聞の未来とは無縁でしょう。家庭欄の料理の記事やレシピなども、決して記事が無意味だとは思いませんが、ユーチューブやブログでおびただしい情報が出回る今、新聞社がそれをやる必然性が問われています。やるなら、紙の時代とは異なる独自の戦略が必要でしょう。そのように見ていくなら、新聞が持つ最大限のパワーは調査報道や深層報道に尽きます。そこで勝負しない限り勝ち目がないのです。しかし、これは政府の支援金をもらっているとできることではありません。そこで新聞が存続するためには経営革新が必要な由縁です。
さらに新聞社の経営が刷新されることは、系列のTV局やラジオ局も刷新され、今までのような「系列」モデルではなく、それぞれが独立したメディアとなることが言論の自由と独立には大切です。たとえばTV局は午前、午後、夜という風に時間帯ごとに経営企業を分離して、多数のプレイヤーに分けた方が良いように私には思われます。NHKの場合は経営委員会ではなく、国会パブリックビューイングのような市民の組織が、報道内容をチェックできるようにする必要があります。
フランスでは、ルモンド紙が経営難からジャーナリズムとしての力を失ったと考えた元記者たちが独立してメディアパルト(Mediapart)という調査報道中心のネット新聞を2008年に作りました。広告ゼロで政府の支援金もゼロで、株主もゼロ。読者の購読料や寄付だけで経営を維持しています。少数精鋭で次々とスクープを出しています。サルコジ元大統領を有罪判決まで追い詰めたメディアでもあります。以下は、私が講読しているメディアパルトの昨年の読者へのレターです。
「こんにちは 村上良太さん
あなたは講読することで、民主主義にとって欠かせない独立した新聞を勇気をもって応援する賭けを行われたのです。私たちの政治システムには皆様の貢献を得て反権力の営みが行われる必要があります。皆様の支援を得てメディアパルトはその役割をしっかりと果たすことができるのです。 恐らく、あなたがメディアパルトを選ばれた理由もそこにあるのでしょうか?私たちは、もし、あなたが時間を割いて(シンポジウムに参加)いただけるとうれしく思っております。私があなたの質問にお答えいたします。
メディアパルトは2008年に創刊されて以来、いかなる妥協も存在しない独立メディアとしてモデルを作り、メディアの世界の中で例外的な存在となったのです。
・広告ゼロ ・国家による援助ゼロ ・グーグルからもフェイスブックからも補助金ゼロ ・株主ゼロ
メディアパルトについてもっとお知りになりたければ、今日その歴史を理解いただけるでしょう。いかにメディアパルトが独立を守って来たのか。昨年3月の13回目の私たちの会計報告もご覧いただけます。ぜひメディアパルトをお読みください。そして、あなたを歓迎いたします。
エドウィ・プレネル メディアパルト共同創刊者・編集長」
■フランスの「メディアパルト」(Mediapart)の有料講読を始めました 共同創刊者・編集長のエドウィ・プレネル氏からの手紙
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202209170751586
■マスコミ各社へのお願い3点 読者との信頼関係修復のために
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202210160107180
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