昨今、第二次安倍政権以後、NHKの報道が劣化しているとはもう腐るほど語られてきました。筆者は日刊ベリタで、2014年秋の解散総選挙をめぐり安倍首相の考えをひれ伏すように聞いて、一切鋭い質問をしなかったNHKの9時のニュースの報道姿勢に厳しい批評を加えたことを思い出します。以後、NHKは本来ならNHKスペシャルで追及すべきだった様々なテーマには触れないまま、NHKは政権与党は批判しない姿勢に転じて今に至っています。
こうしたNHKの劣化は外国の報道メディア企業にとってどう映っているのでしょうか。それは日本進出の絶好のチャンスに他なりません。おそらくは迫ってきた映像報道のグローバル化でNHKは存在感を失ってしまうであろうことです。背景には人工知能の進化による翻訳テロップの進化があり、低コストでかなり正確な翻訳字幕が実現しつつあります。こうなると、日本のTV放送局のように政権与党や日本の財界に忖度しなくてもよい海外メディアのスペシャル番組が、本来NHKが予算でやるべきだった番組の穴を埋める日が遠くないのではないかと思われます。報道統制と排除の中で、干されてきたインディペンデントの製作者たちが、本気を出した企画書を外国メディアに売り込むかもしれません。
※ドイツの放送局 DWの英語版 (ウクライナ戦争特集)
https://www.dw.com/en/russias-war-in-ukraine/t-60931789
※フランスのMediapartによる北アフリカ「サヘル地方」の戦争報道
https://www.youtube.com/watch?v=RrXDDNXsEBQ オランド大統領の時代の2013年にマリで行った軍事介入について10年後にその意味を検証したMediapartの番組。
※米国の「デモクラシー・ナウ!」
https://www.youtube.com/watch?v=pBJmi-wNxQc
インターネットの世界では、どれだけ真実に迫れるかをめぐるグローバル競争が始まっています。ドイツ、フランス、米国、世界各地の放送局は、インターネットにおける視聴層の拡大を目指して、他国語を母語とする人々にも溶け込もうと努力しています。最初は母語と併用する形で英語での放送を各国で広げて来ましたが、次は多様な言語で可能な自動翻訳の全盛期が訪れるはずです。インドの台頭も忘れてはいけません。そうなると、たとえばNHKでかつて活躍された岩田明子解説委員の政治解説と、BBCやドイツの放送局の解説委員による見解と見比べることがごく簡単にできるようになるのです。現在のような状態は、あと数年で幕を閉じるでしょう。かなり速い速度で迫っているのです。
今、日本のメディアが置かれている状況は、1980年代半ばのソ連や東独によく似ています。これらの国では報道は、政府の言いたいことを述べるだけで現実とは何の関係もないものでした。国民が政府に疑問を持たないように常に一定の思考の型にはめて、さらに外国で報じられているような真実に触れさせないことが重要だったのです。東独の市民の中には、西独の報道を視聴していた人々が多数いました。それまで国境を壁で閉ざしてきた状況が、壁の崩壊で不可能になるのです。もちろん、他の先進国の報道がすべて正しいか、となると話は複雑でしょうが、少なくとも今の日本の低迷ぶりが世界の標準レベルに回帰するだけでも、大きく社会は変化するでしょう。第二次安倍政権以後の約10年間になんとよりによってかつてのソ連型報道を模倣した日本のメディア産業は、近年緊密になった金融と情報の関係を考えても、第三の敗戦と言えるものです。
■税と議会制民主主義と安倍首相
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201605272311505
■安倍政権と旧ソ連とアメリカ 日本にソ連型を導入した異色の自民党政治家
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202002161428410
■「共謀罪」で日本のソビエト化を加速する安倍首相 読売新聞は日本版「プラウダ」か
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201706141629353
■J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル(BBCによるジャニーズのセクハラを取材した今年3月18日の放送) Predator: The Secret Scandal of J-Pop
https://www.bbcworldnews-japan.com/programs/predator-the-secret-scandal-of-j-pop/
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