最近、岸田首相がメディア幹部を日比谷公園のフランス料理店に集めて夕食会を行ったことが報じられています。特に、放送行政の問題が国会で話し合われているその真っただ中の出来事で、メディアの腐敗ぶりがありありと浮き彫りになりました。
ツイッター「#岸田首相 は、時事通信元特別解説委員の #田崎史郎 、NHK元解説副委員長の島田敏男、読売新聞東京本社調査研究本部客員研究員の小田尚、日本経済新聞論説フェローの芹川洋一、毎日新聞特別編集委員の山田孝男、日本テレビ取締役常務執行役員の粕谷賢之の各氏と会食。昨年7月と同じ店・メンバーです」(朝日新聞 官邸記者クラブ)
安倍時代の負のレガシーであるメディア幹部と首相との夕食会は日本でしかありえない、欧米ではこんな愚かなことはありえない、という論をよく見受けるのですが、実は同様の事態はフランスメディアでも進行しています。この現象はマクロン大統領の下でも起きています※。そこで、なんでメディアが大統領と飯友になるんだ?と独立メディアが問題視して、以下のようなインターネット独立メディアLe Mediaによる討論が行われました。これらの飯友メディア幹部たちは「ぺロケ(オウム)」と呼ばれています。ルモンドやBFMTVやFigaro、Les Echosなどのメディア幹部がエリゼ宮に呼ばれてマクロン大統領と昼食を共にしたことが暴露されています。
●Le Mediaの討論番組 メディア幹部の大統領飯友問題を論じる
https://www.lemediatv.fr/emissions/2023/dejeuner-secret-a-lelysee-quand-10-editorialistes-font-les-perroquets-de-macron-q_sshji3RCif4BPPJr-7Rg?fbclid=IwAR05ayZfeaOsIIQw77l9OQSEUrbJkcBO3qYQ3Q38mO1RyZT_3Ao6yuzqP5c この問題はマクロン大統領になってからではなく、すでにサルコジ大統領時代に制作されたドキュメンタリー映画「Les Nouveaux Chiens de garde(新たな権力の番犬たち)」でもこの問題が描かれていたのを記憶しています。毎月、大統領とメディア幹部たちが情報交換に一堂に会しているシーンです。このドキュメンタリーではどのコメンテーターがどの局に出入りしており、どのくらいのギャラを得ており、その背後にある大企業・大富豪は誰かを克明にフォローしています。
●「Les Nouveaux Chiens de garde(新たな権力の番犬たち)」のトレイラー
https://www.youtube.com/watch?v=MQLCRR_OhAE
マスメディアが与党とお友達になってしまって、骨抜きにされた挙句、甘い記事ばかりが量産される結果、与党が選挙で勝利する、という事態は、日本で最も進行する現象です。ということはフランスにおいてはMediapartやカナール・アンシェネと言った独立新聞の影響力が日本よりも格段に大きいことと、健全かつパワフルな野党が育っているということがあります。その背景に、労働組合の持つ意味が全然違っている事情があります。フランスでも労組は正社員しか守っていないという批判もあるのですが、それでも企業単位の利益しか考えない日本の労組と異なり、労働者全体に目が届いています。そして、こうしたCGTのような労組がATTACなどの市民運動と結束する結果、そちらから懐柔されたメディアとは異なる情報が大量に市民に届けられているのです。すなわち、労組力の違いが日仏の結果に大きく関係していると私には思えます。とはいえ、先述の通り、フランスでもメディアの危機は起きているのです。Mediapartを創刊した一人がエドウィ・プレネル氏で、もともとルモンドの記者・編集委員だった人ですが、ルモンド紙の独立性に疑問を投げかけて、完全に読者の購読料と寄付で成り立つ調査報道のウェブ新聞を作ったのです。Le Mediaの討論を見ると、フランスではMediapartに続く新しいインターネット調査報道媒体が次々と生まれていることがわかります。
※エリゼ宮の昼食「マクロンがジャーナリストたちを(昼食)に招いた」フランスではメディアの飯友問題がTV報道され、議論を呼んでいる
https://www.youtube.com/watch?v=zFpyIVUiFFE
■フランスの「メディアパルト」(Mediapart)の有料講読を始めました 共同創刊者・編集長のエドウィ・プレネル氏からの手紙
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202209170751586 ・広告ゼロ ・国家による援助ゼロ ・グーグルからもフェイスブックからも補助金ゼロ ・株主ゼロ
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