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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2023年04月23日14時05分掲載
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NHK特集(1985)『日米開戦不可ナリ〜ストックホルム 小野寺大佐発至急電〜』
かつてNHKは優れたドキュメンタリー番組を作ることで知られた放送局でした。時代の真実に切り込んだ番組の1つが1985年に放送されたNHK特集『日米開戦不可ナリ〜ストックホルム 小野寺大佐発至急電〜』です。これは情報が国民の運命を決めるインテリジェンスの重要さを実証した傑作です。現在のNHKの報道とは決定的に異なるエートスがこの番組にはあるのです。もちろん、NHKの中には今日でも優れた番組を作る人はいるのでしょうが、全体としてみれば権力の言うがままにインテリジェンスとは無縁の報道を続けています。
では、NHK特集『日米開戦不可ナリ〜ストックホルム 小野寺大佐発至急電〜』はどんな内容かと言えば、日本が米国との開戦を決断するかどうかの瀬戸際と、敗戦間近の講和交渉の準備の裏話が描かれており、その核となるのはタイトルにもあるように小野寺大佐〜小野寺信氏(スウェーデン公使館附武官)で、スウェーデンのストックホルムから、欧州で集めた信頼度の高い情報を日本の参謀に送っていた人物です。ロシア語が堪能なうえにスウェーデン語にも通じていました。番組でも描かれていますがインテリジェンス活動、諜報活動を行っていました。ある意味でリヒアルト・ゾルゲの日本人版です。
小野寺大佐が送った情報について、このNHK特集で2つ決定的なものを紹介しています。1つは日米開戦前に小野寺大佐が打電した開戦するな、というメッセージです。当時、日本軍は対米開戦準備をしていましたが、決定打は同盟国のドイツ・ベルリンから大島浩大使(陸軍軍人)が送っていたナチスとソ連との戦争がナチスの圧勝に終わる、という情報でした。これはナチスの情報を信頼して、その真偽をチェックしないまま日本に打電していたインテリジェンスなき情報でした。日本の参謀が真に受けたのは、単なるナチスの希望的観測あるいはプロパガンダに過ぎなかったのです。自分たちが日ごろ、唱えているプロパガンダによって自身の脳まで洗脳してしまい、情報分析ができなくなったため、この誤った情報1つで300万人の日本人を殺してしまいました。 安倍首相時代のNHKの対ロ報道はナチスに心酔したベルリン発の情報と似ていました。解説者が安倍首相に心酔していたのです。結果として北方領土は返ってきませんでしたし、島の返還はさらに難しくなってしまいました。
一方、ストックホルムから小野寺駐在武官はナチスは敗北するから対米開戦をするな、と東京に伝えていたのです。小野寺駐在武官の情報源はポーランドのスパイによるもので、当時ポーランドは欧州各地にスパイ網を持ち、確度の高い情報を持っていたと描かれています。ポーランドはソ連とドイツに引き裂かれていた故に、国を救うには情報以外に手立てはなかったのです。番組では存命だった小野寺氏だけでなく、小野寺氏に情報を与えていたポーランド人の「ペーター・イワーノフ」ことポーランド人諜報部員ミハウ・リビコフスキ氏が登場します。小野寺武官は「イワーノフ」が逮捕されそうになった時、英国に亡命させるなどの見返りをして命を助けてやったりしています。
もう1つ小野寺氏が東京に送った情報は、敗戦直前に日本が国体維持のために講和準備を始めようとした時、モスクワに講和のおぜん立てをしてもらうというのは絶対に避けるべきだ、というものでした。その理由は1945年2月のヤルタ会談でソ連の対日参戦がドイツの敗戦後3か月と決定したという情報を小野寺駐在武官が持っていたことです。小野寺武官はスウェーデンの王室に講和を頼めば道が開ける可能性があると打電していました。ところが、この情報はストックホルムに駐在していた米スパイによってワシントンDCに打電され、小野寺大佐が信念に基づき独断でひそかに進めていた講和工作はつぶされてしまいました。とはいえ、小野寺武官の情報は正確で、1945年8月、ソ連はナチの敗北から3か月後に対日参戦しました。
この番組を見れば、小野寺信という正確な情報を打電してくる人物に見合ったインテリジェンスが東京に存在していなかったことがわかります。日本は英米のインテリジェンス力に全面的に敗北していました。正確な情報判断ができる人物が東京にいなかったため日本は無謀な戦争をはじめ、さらに原爆に見舞われ国土は焦土と化すなど、これ以上ないまでに悲惨な敗北をしたのです。今日の日本政府は英米とともに進もうとしていますが、それは独自のインテリジェンスではなく、単にその時々で一番力ある者に付き従う以上のものはありません。第二次大戦で言えばそう見えたナチスに目がくらんだベルリンの大島大使と同じ水準です。今日のNHKは同じ誤りを行っているように私には見えます。戦後、昭和の時代までは日本人は敗北の原因、そして戦争の惨禍を見つめようとしていました。1985年に同局が制作した特集を見て、もう一度、かつてのNHKを取り戻す決意をしてほしいものです。
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