アフリカ北東部スーダンで国軍と準軍事組織「迅速支援部隊(RSF)」の戦闘が続く中、紛争地での人道支援やアドボカシー活動を行う「日本国際ボランティアセンター」(JVC)は4月24日、声明〈スーダンでの武力衝突の即時停止と、国際社会からの働きかけを呼び掛けます〉を発出した。
同声明の詳細は以下を参照。※JVCホームページより (https://www.ngo-jvc.net/activity/advocacy/sudan_20230424.html )
4月15日(土)午前(現地時間)、スーダンの首都ハルツームで、国軍(Sudanese Armed Forces:SAF)と即応支援部隊(Rapid Support Forces: RSF)の武力衝突が発生しました。 首都ハルツーム市街地をはじめ各地に広がった戦闘により、市民の犠牲者は400人を越え、負傷者も3,500人を越えています。戦闘が起きている地域では、当団体現地スタッフとその家族を含め、多くの市民が自宅から出られず避難もできない状態が続いています。停電や断水に加え物流も停止する中、食料や飲料水が底をつき事態は切迫しています。病院への襲撃も横行し、多くの病院が機能停止状態に陥っていて負傷した市民の手当もできません。国連機関やNGO事務所も攻撃や略奪を受け支援活動は停止し、国際スタッフは国外退避を開始しています。私たちはスーダンで人道支援を行うNGOとして、戦闘当事者に以下を求めるとともに、国際社会からの強い働きかけを呼び掛けます。 * 市民が安全な場所に避難するため、ただちに人道目的の停戦を行うこと。 * 国際人道法に則り、戦闘当事者は市民を保護すること。市民への攻撃、市民の住居の占拠、市街地への砲撃や空爆、病院への攻撃や占拠は許されません。 * 負傷者や避難民が必要な支援を受けるため、人道支援関連施設への攻撃、支援従事者への攻撃、人道支援活動の妨害を停止すること。
今回の戦闘の背景と国際社会の関与について
日本国際ボランティアセンター(JVC)は2006年からスーダンに拠点を置き、紛争による国内避難民の生活を支える活動を続けてきました。スーダン政府は正規の国軍のほかにRSFという準軍事組織を持ち、この両者が主導権を争いながら国内紛争に関わることで、紛争が激しさを増し、より複雑化するといった側面がありました。 2019年に長期独裁政権が倒れて民政移管プロセスが始まり、スーダンの人びとは民主化と国内紛争の終結に希望を見出しました。しかし、圧倒的な市民の支持を受けた民主化勢力に対して、軍部(国軍とRSFが手を組んだ暫定軍事評議会)は政治の実権を渡そうとせず、混乱が続きました。2021年には軍事クーデターを起こして軍部は民主化勢力の排除を図ります。その後、2022年12月には再び民政移管に向けた合意がなされますが、合意内容に含まれた軍の統合再編を巡って、国軍とRSFとの対立がエスカレート。首都で市民を巻き込みながら全面衝突という最悪の形になってしまいました。 国軍とRSFとの対立は、利権をめぐる争いでもあります。両者はともに、旧独裁政権の時代から政治に取り入って利権を獲得し、軍系ビジネスなどで利益を上げてきたと言われます。特にRSFはダルフールの金採掘、イエメン戦争への派兵などの傭兵ビジネスで知られています。貧困を理由にやむを得ず傭兵に参加する人びとも多くいます。人びとに困難な生活を強いる一方で国家を私物化するような政治・経済・軍事体制が続き、それに対して市民の不満が一気に広がったのが2019年以降の民主化の動きです。 国軍とRSFとの利権争いには、それぞれを支援し、またビジネス上の取引を行ってきた周辺国をはじめ諸外国が深く関与しています。今回の衝突について、両軍に影響力を持つ関係国の責任は少なくありません。 国際社会は、両軍に対する国外からの支援や介入を認めず、停戦への働きかけを強めるべきです。日本政府にも、G7諸国との協力のみならず、中東・アフリカの近隣諸国やスーダンに影響力をもつ中国も含めた国際社会への働きかけなど、国連安全保障理事会理事国として積極的な関与を期待します。
認定NPO法人日本国際ボランティアセンター(JVC)
|