ジャニーズのセクハラを事実上組織的に黙認してきたメディアの中でも最も重大な責任がある公共メディアのNHKについては、すでに多くの人々が解体を求めている。あるいは、サブスクライブにして受信料は契約する人だけで払って受信機を持っていてもすべての人から料金徴収できないようにしろ、という声も強い。NHKが加速的に政権与党の宣伝部門化したのは過去20年であり、特にこの10年間だった。その間に、公共メディアとして視聴者が疑問を投げかける様々な番組や報道があった。これらについては検証委員会を外部に設立して徹底的に検証することが、日本の民主主義の再建に欠かせまい。いや、民主主義どころか、情報の重要さを考えれば喫緊に対処すべき日本国の存亡にかかわる事態なのだ。
NHKについてはそもそもその機構自体が外郭団体と、外部プロダクションやフリーランサー、派遣社員などで幾重にも差別的な序列を維持しており、そうした体質はジャニーズのセクハラ黙認と通底している。すなわち民主的な精神が根底に存在していない組織なのだ。「上」には徹底的に盲従し、「下」には常に威圧的である。軍隊組織的ですらある。突然上から愚かな方針が出ても、永遠の真理ですらあるかのように、オウムのようにあちこちで金太郎飴のようにその言葉が繰り返される。昨日までの方針との整合性や論理性などおかまいなしだ。その意味では書記長が変わるたびに方針が一変した旧ソ連のようですらある。若い頃からこの組織にどっぷりつかった彼らは、それが異常であることすら認識できないのだ。
したがって、職員は全員解雇する必要があると私は思う。しかし、一気に解雇したのでは業務が止まるので、3分の1だけ引継ぎ用に10年の契約期間を残し、残りは即座に全員解雇するのがよかろう。そして、一度解雇されたNHK職員は10年間は再雇用できないことにする。10年間雇用が継続される職員も、10年後に解雇されたら、最低10年間は再雇用されないようにすべきだろう。そして、NHKとは異なる民主主義に忠実なエートスの人材を改めて雇用するのである。残る3分の1の職員は、彼らの支持に従って説明をしたり作業をしたりする。つまり、指揮権はもう彼ら残存職員には渡さないのだ。このようにしなければならないのは残念だが、NHKには内部から組織を改める能力も意志も存在しないと言える。反民主的な精神風土は根源から除去することが大切だ。ただし、公共メディアは必要であり、資本家の利益のために番組が作られるような民営化を間違ってもしてはならないのだ。
NHKが民放と異なるのはディレクターは最初からディレクターとして雇用されてきた歴史があり、民放でアシスタントディレクターから経験を積み上げてディレクターになるのと違って、NHKではディレクターとは一番底辺の存在である。そして、現場に行かないチーフプロデューサーがディレクターが撮影してきた素材の細々した点まで編集やナレーションで注文をつける、ということが多い。現場を直接見て知っている取材者を最も地位の低い位置に置く、というところにNHKの本質が象徴的に示されている。このような倒錯した組織の力学こそが政治家と権力者を忖度する組織を形作っているのだ。必要な情報を入手するために、この現代の世界の中で生き延びるために、早急で揺るぎないNHKの抜本的改革が必要だ。
武者小路龍児
●各種メディア従業者の男女比(全国)2020年現在
https://www.sendai-l.jp/wp/wp-content/uploads/2022/05/pdf-chousa-3-2-2-220525.pdf NHKの放送に関する女性職員の割合は24.7%に過ぎない。 4分の1以下である。
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