昨日、1ユーロが158円をつけた。これは欧州旅行をしようという人々や留学しようという人々にとっては経済的な試練だろう。もちろん、海外の本や物品、食品などを買う人々にとっても。その背景には欧州中央銀行(ECB)が金利を上げる決断をしたことがある。NRIのウェブサイトにある木村登英氏のコラム「10回連続で利上げを決めたECB:軸足は利上げから政策金利の高水準維持に」*では、10会合連続と指摘してある。「欧州中央銀行(ECB)は14日の定例理事会で、政策金利(中銀預金金利)を0.25%引き上げ4.0%とすることを決めた」これは脱コロナ期の需要拡大に加えて、ウクライナ戦争に端を発するエネルギー価格の高騰なども絡んだ物価高対策と思われる。ECBはインフレ目標を2%に設定しているが、7月のユーロ加盟20カ国のインフレ率は前年同期比で5.3%と鈍化傾向と言われながらも未だ2倍以上の高さだった。
一方、日銀はこれまでのマイナス金利政策を維持する方針であることが報道※※された。つまり、米国(今年9月現在で政策金利を5.25〜5.5%に誘導目標)や欧州連合が金利を上げて物価高対策をしている最中、日銀の政策金利は短期金利をマイナス、長期金利をゼロに据え置いているため、ドルやユーロと金利差が拡大して(金利の安い円を売って金利の高い=儲かるドルやユーロを買う人が増えるため)円安にさらに触れている。すなわち、欧米の政策金利と4〜5%の金利差まで広がっている。
長年、自民党政権は円安政策を取り、大手の輸出産業を奨励してきた。円安になれば輸出する製品は外貨では安値になる。一方、円安で損を被る産業や人々に、国が政策で輸出産業の利益を還元してきたとは言い難い。これは不公平な政策である。金利差は自然現象ではなく、政治が生じさせている現象だ。仮に円安を日本の国是として為替政策としたとしても、それで儲かる産業の利益をシェアし、それで損を被る産業や人々を支援するのが政治であろう。その意味では政治は不在だ。
日本の家庭を今直撃しているのが食料品の物価高である※※※。価格が据え置きだったとしても、中身が格段に小さくなったという商品はたくさんありそうだ。日本の食糧事情は輸入品だらけだ。円安の影響を大きくかぶっている。学校の給食の中身も貧しくなりつつあると聞く。委託された給食業者の中には経営破綻すらしている企業がある。国は先述の通り、こうした庶民に円安政策で儲かってきた企業群の利益を還元する義務がある。
※NRIのウェブサイトにある木村登英氏のコラム「10回連続で利上げを決めたECB:軸足は利上げから政策金利の高水準維持に」
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2023/fis/kiuchi/0915_2
ユーロ圏インフレ率、7月前年比+5.3%に鈍化 コアも減速(ロイター)
https://jp.reuters.com/article/euro-inflation-idJPKBN2ZB0KE
※※ロイター「日銀、金融政策の現状維持決定 マイナス金利・YCCを継続」
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/DWGPOSJ265KIDOFN265TKM63NA-2023-09-22/ 「短期金利は引き続き日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用。長期金利は、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買い入れを行うとした」
※※※北海道放送「過去最大級の値上げ…10月も食品価格が高騰、野菜は記録的な猛暑や大雨で収穫量が激減 店側「物を確保すること自体が難しい」
https://news.yahoo.co.jp/articles/1e6435893556cdc37c513a4b1e5fb1c5d7bca8dd
朝日「急速な円安、暮らしを直撃 食品や雑貨値上げで消費意欲に影響」(今年4月)
https://www.asahi.com/articles/ASQ4X6WK0Q4XULFA039.html
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