米国環境保護庁(EPA)は9月29日、商用としては世界初の散布可能なRNA農薬レドプルナに関する意見公募を開始した。レドプルナは、遺伝子サイレンシング技術を利用して、標的害虫であるジャガイモの葉を食害するコロラドハムシの生存に不可欠なPSMB5タンパク質の生成に必要な遺伝子発現を抑制し、そのタンパク質の生成を妨げ害虫を殺すという。(有機農業ニュースクリップ)
レドプルナはグリーンライト・バイオセンス社が開発したRNA農薬で、チアメトキサムなどのネオニコチノイド系農薬やアバメクチンなどの既存の殺虫剤に急速に耐性を獲得したコロラドハムシを標的生物としている。意見公募に関する米国環境保護庁の発表では、コロラドハムシ以外の非標的生物に対する影響については言及していない。
米国環境保護庁は承認に関し、米国の雑滅危惧種保護法を含めた評価を行うとともに、経済協力開発機構(OECD)のRNAiベースの農薬に関する農薬作業部会の専門家グループの指導を受け、国際的なパートナーやこの分野の専門家とも協力してきたとしている。
米国環境保護庁は今年5月、米国内10州(アイダホ、メイン、ミシガン、ミネソタ、ニューヨーク、ノースダコタ、オレゴン、バージニア、ウィスコンシン、ワシントン)に限定した実験的な使用(EUP)を許可していた。この実験的使用による安全性にかかわる問題の報告はなかったとしている。散布にあたって、ゴーグルや粒子フィルターマスクなどの保護具の装着が条件とされている。
・EPA, 2023-9-29 EPA Opens Public Comment Period on Proposal to Register Novel Pesticide Technology for Potato Crops https://www.epa.gov/pesticides/epa-opens-public-comment-period-proposal-register-novel-pesticide-technology-potato ・GreenLight Biosciences https://www.greenlightbiosciences.com/
● 万能薬ではないRNA農薬 こうした遺伝子サイレンシングを利用した殺虫剤に対して昆虫が耐性を持ちえないかと言えばそうでもなさそうである。2018年に発表されたモンサントの研究論文によれば、トウモロコシの害虫を使った実験で耐性を獲得したという。RNA農薬に耐性を持ちうるなら、RNA農薬がすべてを解決する万能薬ではない。
さらに、散布されたRNA農薬は地下水を介して移動する可能性が指摘され、生態系にどのような影響を与えるかはまだはっきりしていないという。
・PNAS, 202-12-9 RNA-based pesticides aim to get around resistance problems https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2024033117
みどりの食料システム戦略で農水省は、化学農薬の使用量半減(リスク換算基準)を達成するための技術の一つとして遺伝子サイレンシングを使ったRNA農薬を挙げ、2040年代の実用化を掲げている。
・農水省, 2021-5 みどりの食料システム戦略 https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/attach/pdf/index-10.pdf#page=28
【関連記事】 ・RNA干渉害虫抵抗性GMトウモロコシ http://organic-newsclip.info/log/2020/20111092-1.html
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