昨日「テレビにおける啓蒙と野蛮 〜国会パブリックビューイングが照らし出したメディアの問題点」ということで、テレビが国民を政治から排除してきたことを書きました。特に過去10年くらいは高市総務大臣(当時)の恫喝も効いて、一層加速してきました。しかし、それだけではなく、そもそも新自由主義における自由貿易協定の時代には政治を国民から切り離す方向性が濃厚になってきたのです。これは全世界的な傾向です。
ここから、想像できることは、れいわ新撰組をテレビ局としてはあまり報道したくないであろうことです。その理由は、2019年の品川駅前における選挙演説会が象徴するように、れいわ新撰組は政治は暮らしである、ということを掲げているところにあります。政治とは、イデオロギーよりも、もっと身近な生活と直結する問題を扱うものである、という考えを最も打ち出しているのがれいわ新撰組です。つまり、れいわ新撰組の方向性は、この10年間、テレビ局が歩んできた傾向を逆走するものであるのです。その象徴が消費税を撤廃せよ、というれいわ新撰組の最も特徴としている主張です。
テレビ局は政治が身近だと思われてしまうと困るのです。なぜならそう認識されれば国民が政治に関心を持ち、国民が政治に参加してしまうからです。これまでマスメディアの働きかけのおかげで、というよりも不作為のために、総選挙の投票率は右肩下がりに推移してきました。それは言うまでもなく、そのように放送がデザインされてきたからです。その理由はこれまでに書いてきましたが、自由貿易協定の策定プロセスに象徴的なように、多国籍企業と結びついた内閣は、なるだけ国会・国民に気づかれないようにルールを作って、多数決で一気に条約を批准したいと考えているからです。同様に国内のテーマでもそうです。できるだけ国民に真のテーマに気づかれないように選挙では真の争点を隠し、メディアは意図的に報道を大幅に抑制してきました。
たとえば2013年秋に法案が提出された特定秘密保護法案ですが、国民の知る権利や表現の自由を制限する内容にも関わらず、2013年7月の参院選挙では争点になっていませんでした。さらにまた、2014年暮れの消費税増税時期の延期をテーマにした謎な選挙ですが(実際は重なるスキャンダルで支持率が低下してきた政権の長期化を狙った選挙だった)、安倍政権の真の意図は安保法制を提出して国会で通すことにありました。実際にこの憲法に反する法案が提出されたのは翌年2015年5月で、投票日のあった2014年12月の段階で政権が法案の準備をしていなかったとは考えられません。しかし、この2014年の衆院選挙は、投票率が52.66%と史上最低になったことは記憶に新しいところです。この時、投票では白票を、という白票運動までネットで盛り上がっていました。この総選挙で圧勝した自民党は、この投票日の半年後に、海外で戦争を可能にするという、戦後史上、日本人の運命を最も左右する法案が提出されたのです。2014年11月にNHKが9時台のニュースで、この総選挙をなぜ行うのか、ということで安倍首相のインタビューをリモートで行いましたが、そこで安倍首相が話したいことだけに終始し、NHK側からジャーナリズムに値する質問は一切出ませんでした。安保法制の話もありませんでした。この時、私はNHK内部で職員たちによるこうした報道への抗議とかアクションがいよいよ出るかと思いきや、そういうものはついになかったのです。主権者の目の届かないところで政治が決められるのは越権行為です。投票したからと言って、国民が政治家に主権を譲り渡したことではまったくありません。
また、安倍首相から岸田首相まで、なぜ食事に事欠いている国民が増えているにも関わらず、海外の国々に多額の資金を与えているかもデテールの報道がなく、国民は蚊帳の外です。その金額の算出根拠があるはすですが、明かされません。選挙で争点が隠されている、ということは国民主権の実質的な否定です。投票日の夜に初めて多少の情報が明かされてきましたが、そこでも核心的な情報が出ていることは少ないのです。たとえ国民の中で問題に気づいた人々が出てきてデモが起きても、なるだけそれを報道しないようにしています。それは今に始まったことではなく、何十年も前から一貫してそうなのです。もし国民が政治に関心を持てば、このような不誠実なメディアに黙っていることはできないでしょう。
その一方でメディアはタレントを集めたトークショーやアニメーションなどのファンタジーにこそ楽しみや夢や希望があるのだ、というイデオロギーを完徹してきました。ヒーローやヒロインのことなら、どんな細かいことでも知りたい・・・視聴者や国民がファンタジーの世界の登場人物やその世界にオタク的に詳しくなって、そちらで自己実現の幻想を持てば、現実世界における政治からの逃避となる傾向につながるでしょう。もちろん、そうではない人々もいるでしょう。しかし、多くの場合、ファンタジーの世界へののめり込みは、現実政治への関心と反比例しているところがあるのではないかと思います。アニメの登場人物に対する知識度と、現実の政治家や政党、政策に関する知識度とバランスはとれているでしょうか。テレビをのんべんだらり、と見る傾向もこのことと関係します。しかし、いくらファンタジーの世界で満足できても、自分が現実に生きる世界で、仕事の環境が厳しくなったり、食品の価格が値上がりしたりすれば、その不満は解消されないまま残ります。
もし、そうした人々がファンタジー以上に、政治が夢や希望を実現する面白いものだと目覚めてしまったら、大きな政治的変革が起きかねません。それが、れいわ新撰組という政党にマスメディアが警戒している真の理由であろうと私は考えます。テレビ局という営利企業にとって、それはスポンサーを揺るがし、ひいてはビジネスモデルの変革を迫られるものにすらなりえるからです。
■安倍首相 「税は議会制民主主義の基礎である」
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201411182309112
■税と議会制民主主義と安倍首相
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201605272311505
*消費税10%再延期へ 安倍首相が方針固める 5月に正式表明(産経 2016年3月記事)
https://www.sankei.com/article/20160328-EDEIID3S4ZNFZEAFBBQNRJL34Y/ 安倍首相が2014年暮れの総選挙の命題を反故にしたことを示した記事。
■今回の選挙戦、最大の敗者は民間放送局だったかもしれない
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201907220117061
■れいわ新選組 「れいわ祭」 政治の新しい風 〜日本社会を象徴する町の候補者たちが続々登壇〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201907121813325
■フランスのレピュブリック広場で続く人々の大討論会 'Nuitdebout'(立ち上がる夜)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201605261957504
■れいわ新選組の演説を聞きに来た人に聞いた
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201907161338432
■フランス国会議員選挙(第一回目投票)で高い棄権率 有権者の約50%が投票せず 第五共和制が始まって以来の低迷
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201706141106253
■仏大統領選挙、マクロンが当選 棄権票も1969年以来最高を記録
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201705081442451
■貴族制社会への移行 身分の固定化と一定額以上の納税をした国民だけに選挙権が与えられる国に戻る可能性
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201704250037572
■選挙と投票率 なぜ若い世代になるほど投票率が下がるのか この分析に野党躍進のヒントがある
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201606180203556
■税と議会制民主主義と安倍首相
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201605272311505
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