これは今さら言うまでもない問題と思いましたが、それでも書いておこうと思います。テレビの報道番組が、視聴率と深く関係していることであり、それが報道に悪しき影響を与えていることです。民放の報道枠で番組を作っていると、視聴率を取る番組を作ることにプライドを感じ、視聴率がむしろ良い番組を作る指標であると思うようになります。そして、視聴率至上主義はよくないと言えば、負け犬のように響いてしまうものです。しかし、実際のところ、視聴率が取れそうにないために、いくら重要なテーマであっても報道できないものがたくさんあります。さらに、報道できたとしても、それは問題が進展して多数の死者が出るまでに至ってようやく、ということが多いのです。多数の死者が出ると、話題になり視聴率につながるからです。
パレスチナの問題でもこうした大規模な戦闘になると報道が行われますが、平時はいくら抑圧が問題となっていても「前に(何年か何十年かも前に)その話はもうやったから」という具合です。昭和時代の末期頃から報道番組のエンターテイメント化が進んできて、番組にタレントが常時登場することが増えましたが、これも視聴率を上げてテレビ局が売り上げを維持するためです。日本の入管の問題や外国人労働者の問題も、変死が多数出る段階になって初めて取り上げられるようになりますが、それまではこうした移民や外国人の話は地味なテーマで視聴率が取れないネタだと思われることが多かったのです。
視聴率を上げるために、番組の作り方をより工夫することで進化できる面もありますが、逆にエンターテインメント化によって過剰な選出に陥ってしまうこともありますし、話をわかり易くしようと過剰に単純化する場合も多くあります。そのことによって、現実の感触、現場で感じたリアリティとは異なるまとめ方になってしまうこともあります。しかも、視聴率を上げるために報道時間そのものも短い時間を余儀なくされます。国会が1日、平均何分報道番組で取り上げられるかを考えてみるだけでも明快です。本来は、大切なテーマなら視聴者がわかるまで時間をたっぷりと割くべきなのです。そのためには報道番組を営利システムで行う現状を変える必要があります。テレビ局の1日を多数に分割して、報道専門とか、様々な専門性を持つ制作会社に制作から放送まで任せてしまった方がよいというのはそのためです。そして、報道番組を作る企業は公共性が特に高いために補助金を与えられてしかるべきでしょう。しかし、それは与党や財界を忖度するような形ではなく、公明正大な形での補助金です。なぜそれが必要なのでしょうか?
政治は国民のものであり、主権が国民にある以上、国民には情報を得る権利があるからです。ですから、国民を政治に参加させるためには情報をきちんと出さなくてはなりません。今の営利のシステムでは、情報はまったく不足しています。そのため、視聴者は重要な問題に判断を下すことができなくなってしまいます。これは現行のシステムの問題であり、民主主義を実現する上で障壁となっている問題です。NHKはすでに公共性と公平性を失い、与党に隷属したメディアになっていることが問題です。今、情報でも格差が生じ始めています。外国語で海外の報道を日常的に見ることができる人と、そうではない人とで大きな情報の質と量の差が生まれています。また国内の情報でも新聞代が払えない、サブスクリプションする余裕がない、という家庭では情報が限られてしまい、現在の営利目的の偏ったテレビニュースしか頼るものがなくなってしまいます。これでは、民主主義を実現することは不可能です。信頼できる公平な情報が必要です。そのためにもテレビのシステムを抜本的に改める時期に来ています。
●提案 参政権を行使するためには国内と国外の情報が不可欠であり、その意味で国民は情報を得る権利がある。その情報は企業の営利で 取捨選択されるべきものではなく、国民が政治について判断を下すうえで必要かどうかという選択の基準で行われるべきである。その意味で、情報へのアクセス権は水や空気へのアクセス権と同じである。
■日本の大メディアによる、フランスの年金改悪反対デモの伝え方 朝日新聞もNHKもデモへの冷笑的視点で描いてきた
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202001202020581
■朝日新聞とは? 2
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201008291040590
■朝日新聞とは? 3
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201009080055493
■ある在仏スペイン人の名刺 「私は人間です」
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201311290626485
■イラストレーター ソフィア・マルチネック 〜見る人をわくわくさせる天才〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201312010315390
■パリの物乞い
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201312030958512
■忘れないための闘い 〜石に刻む・金属に刻む〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201312101332262
■左派の野党勢力の中心はれいわ新選組に向かう 与党との対抗軸を鮮明に築ける政党である
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202208270529496
■政治家の世襲禁止法の制定を 日本は未だ近代以前の身分制社会
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202210162324200
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