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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2024年11月12日23時10分掲載
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市民活動
長生炭鉱遺骨返還事業 市民団体の訴え 政府主導での調査実施を求める声高まる
「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」(以下、「刻む会」)は、11月6日、同会が進める長生炭鉱の遺骨返還事業をめぐって政府と面会し、「刻む会」共同代表の井上洋子さんと社民党の大椿ゆうこ参議院議員が、厚労省人道調査室と外務省に対して、政府が主導して遺骨返還事業を行うことを求めた。同日、井上さんや大椿議員らは、衆議院議員会館で政府との面会の様子や、遺骨収集に向けた作業の進捗状況などについて報告する記者会見を開いた。
1942年2月3日、山口県宇部市の長生炭鉱で大規模な水没事故が起きた。戦時下における当時は、エネルギー資源の石炭を確保するため、各地の炭鉱で多くの労働者がその採掘作業に動員された。海底炭鉱の長生炭鉱もその1つで、ここには日本の統治下にあった朝鮮半島出身の労働者が、坑道奥地などリスクの高い作業場に配置された。同炭鉱では海底坑道の天井が崩れ落ち、海水が流入したことで183人が生き埋めとなり、そのうち136人もの朝鮮半島出身者が犠牲となった。犠牲者の割合からも、朝鮮半島出身の労働者が、坑道内でも特に危険な場所で過酷な業務を行なっていたことが分かる。水没事故が起きて以降、長生炭鉱は閉山となり犠牲者の遺体はそのまま、事故から82年が経過した現在も遺骨は水没した坑道内に眠っている。
政府は、長生炭鉱で犠牲となった者を戦没者として扱っていないことから、坑道内の遺骨調査を実施していない。国会では「政府が責任を持って遺骨の収集と返還を主導するべき」との意見も出ているが、政府は対応する姿勢を見せず、社民党の大椿ゆうこ議員は、戦没者の遺骨返還事業を所掌する厚労省が長生炭鉱で水没した遺骨の調査を行うべきと訴えている。
こうした中、現在、市民団体の「刻む会」によって犠牲者の遺骨を収集して遺族に返還する事業が進められている。同会は、毎年、犠牲者へ追悼を捧げる集会を開催しており、今年2月に行われた追悼集会で、遺骨収集に向けた調査を独自に行うことを示した。その後、炭鉱が位置する土地の所有者を調べ、クラウドファンデングで資金を集めて坑道周辺の掘削工事を行い、9月に82年ぶりに坑口(坑道の入り口)の扉を開けて坑道内の潜水調査を実施した。11月6日に行われた政府との面会は、こうした調査によって判明した坑道の状況を説明しつつ、今後の調査に関して政府に協力を求めたものである。
面会後に行われた会見で井上さんは、潜水調査まで進んだ経緯を説明しつつ、「抗道内の一番深いところに潜って行ければ遺骨を発見できると思っている。来年1月から2月にかけて行う予定の潜水調査では遺骨が見つかることを期待している」と述べた。また、継続的な潜水調査を実施するために安全確保の観点から坑道の補強工事の必要性を訴え、その費用に厚労省人道調査室に当てられた予算を活用するよう求めた。会見には多くのマスコミが集まり、記者から、政府が長生炭鉱の事故で犠牲となった者を戦没者と認定してないことについて見解を問われる場面があった。これについて井上さんは、「戦没者に該当するかどうかは政府が勝手に線引きしたものだ。戦没者という概念の枠を広げ、戦争が原因で亡くなった方々全てを戦没者として扱うべき」と主張した。
大椿議員は、「『刻む会』は、昨年12月にも政府の協力を求めて交渉を行なった。しかし、遺骨の所在地が判明しないことなどを理由にこれまで調査に応じていない。今回は、『刻む会』が炭鉱の抗口を開けて潜水調査を実施したことで、昨年とは状況が大きく変わっていることから、改めて長生炭鉱の現状を説明するために厚労省及び外務省の担当者と面会を行なった」などと政府との面会に至った経緯を説明。また、社民党としても厚労大臣が現地を視察することや、長生炭鉱における遺骨収集・返還を厚労省人道調査室の事業として協力することを求めており、引き継ぎ続き要請を行うことを報告した。
このほか、会見に出席した福島瑞穂参議院議員は、「今後、国会で超党派を構成してこの問題に取り組み、政府に対して自らの責任で遺骨調査を完遂するプロジェクトを立ち上げることを訴えていく」とした。また、遺族である鄭歩美(チョン・ポミ)さんは、「私たち犠牲者の遺族にとって、遺骨の引き揚げは悲願であり、今日の日を迎えられたことに言葉では表現できない程の感謝をしている」として、遺骨返還事業における協力を呼びかけた。
福岡厚生労働大臣は、「刻む会」が政府との面会と記者会見を行なった前日(5日)、同会が長生炭鉱の遺骨調査を実施していることに関して「民間団体が行う調査に政府が協力することは現時点で考えていない」との発言をした。井上さんは「残されたご遺族のためにもできるだけ早く遺骨を見つけ出して返還したい」と話している。遺骨返還事業に乗り出した市民の活動は、多くのメディアに取り上げられて世間の関心も高まっている状況にある。政府は遺骨調査の実施方針の見直しを図る時がきているのではないか。今後の動向が注目される。
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記者会見の様子(左から)福島参議院議員、大椿参議院議員、「刻む会」共同代表の井上洋子さん、遺族の鄭歩美(チョン・ポミ)さん
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