・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・アジア
・農と食
・人権/反差別/司法
・国際
・イスラエル/パレスチナ
・入管
・地域
・文化
・欧州
・市民活動
・検証・メディア
・核・原子力
・環境
・難民
・中東
提携・契約メディア
・AIニュース


・司法
・マニラ新聞

・TUP速報



・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus

・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2025年04月01日
・2025年03月31日
・2025年03月30日
・2025年03月29日
・2025年03月28日
・2025年03月27日
・2025年03月26日
・2025年03月23日
・2025年03月22日
・2025年03月21日
|
|
2008年08月04日11時07分掲載
無料記事
印刷用
ブラジル農業にかけた一日本人の戦い
<12>米企業の遺伝子組み換え汚染から「食の安全」を守りたい 和田秀子(フリーライター)
■“ジャポネス・ガランチード”を取り戻したい
資金難のため、バイア州の「戦後移住者開拓団地」の開発をあきらめた横田さんは、2004年、2,300ヘクタールの土地をバイア州に残したまま、日本に向けて飛び立った。 「もう一度、なんとしても日本人の威信と信用を取り戻したい」そんな気持ちで、横田さんはブラジルを後にしたという。
日本人が、初めてブラジルに渡ってから100年間、その勤勉で優秀な働きぶりは、“ジャポネス・ガランチード(信頼のおける日本人)”といわれるほど、ブラジルで高く評価されてきた。 ブラジルの農業労働者たちの間では、きちんと賃金を支払ってくれる日系人の農場で働くことは、ちょっとしたステータスであったという。
しかし、コチア産業組合の崩壊とアメリカ資本の進出により、大豆栽培に従事していた日系人農家の多くは、破綻に追い込まれた。そのため、使用人も解雇せねばならず、“ジャポネス・ガランチード”という名声は、ガラガラと音を立てて崩れ去ってしまったのだ。だからこそ横田さんは、ふたたびブラジルの大地を耕すことで、日系人の威信と信用を取り戻したい、と考えていた。
■遺伝子組み換え種子の脅威
そしてもうひとつ、横田さんには守りたいものがあった。それは“食の安全”である。 ブラジルでは、2003年8月まで遺伝子組み換え作物の生産は禁止されていたが、アメリカの強い圧力によって解禁となった。
ブラジル国内での遺伝子組み換え種子の使用は、現在でも厳しい管理下におかれているが、水面下では違法な生産が進んでいたため、現在ブラジルで生産されている大豆の約60%が、遺伝子組み換え種子によるものだという。とくに、アメリカ資本がブラジルに進出してからは、その傾向が顕著だと横田さんはいう。
「アメリカでは、穀物の生産性低下が深刻な問題となっています。その理由は、化学肥料の大量使用によって土壌に塩化ナトリウムが蓄積し、“塩化現象”が引き起こされた結果、作物の生産量が落ちてしまったからです。 そこでアメリカは、種子の遺伝子を試験管の中で組み換え、塩に強い種子を作り出したんです。 品種改良を重ねて作った種子なら問題はなかったんですが、自然界にはまったく存在しない種子を人工的に作り出したため、『その葉っぱを食べた害虫たちが次々と死んでいく』、という現象が起きました。そんな作物が、私たち人間の口に入り、家畜の飼料としても使用されているんですから、本当に恐ろしいですよ。だから私は、遺伝子組み換えでない“安全な食物”を作りたいんです」 というのが横田さんの願いなのだ。
■グリーンベルトで遺伝子組み換え種子をブロック
しかし、遺伝子組み換え種子が大半を占めるようになった今日において、横田さんがいう“食の安全”を確保することは、たやすいことではない。なぜなら、作物の花粉は風に乗って飛来したり、蜜蜂や、その他の昆虫などによって運ばれたりするため、たとえ自分の農地で遺伝子組み換え種子を使用していなくとも、知らず知らずのうちに汚染されてしまう。その結果、作物の生態系が壊されてしまうのだ。 すでにメキシコでは、貴重な在来種のトウモロコシが、飛来した遺伝子組み換え種子に汚染され、存亡の危機に陥っているという。
「だから私は、まだ生態系が壊されていないセラードの土地を新たに購入して、その周囲100キロメートルにわたって植林しようと考えています。つまり、農場の周りに“木の壁”(グリーンベルト)を作ることで、花粉の侵入をシャットアウトするんです。 さらに、この土地に入植を希望する方には、『一粒たりとも遺伝子組み換え種は使用しません』という誓約書にサインしてもらいます。ここまで厳しく管理しない限り、遺伝子組み換え種子による汚染を食い止めることはできません」
横田さんは、2004年に日本に帰国して以来、そんな構想を実現するため、ふたたび開拓資金と協力者を求めて飛び回っていた。
■同志たちと共に会社を設立
しかし皆、横田さんの意見に同調してくれるものの、“出資”となると簡単には進まない。前回の帰国の際には、まだ “コチア産業組合”という受け皿があったため信頼も得やすかったが、横田さんひとりとなると、なおさらハードルは高くなっていた。
自分で選んだ道だとはいえ、たった一人の戦いは想像以上に孤独なものだ。生活費も底をつく状態となり、ホームレスが集まる炊き出しの列に、そっと並んだこともあったという。
そんな横田さんを心配して、協力の手を差し伸べたのが、バイア州「戦後移住者開拓団地」時代の同士であった中沢宏一さん(64歳)と、蛸井喜作さん(72歳)だった。
「彼らは、私のために会社を興してくれたんです。私ひとりじゃなんともなりませんが、ブラジルの日系社会で人望の厚い中沢と、現在も植林事業をおこなっている蛸井が加わってくれれば、大きな力となりますから」 横田さんがこう語るように、中沢さんと蛸井さんは、横田さんの夢を共に実現するために、「株式会社コチア青年セラード開発」を起ち上げたのだ。
筆者は今年5月、現在サンパウロ州に住むこのふたりを訪ね、会社設立までの経緯や今後の展望について話をうかがった。(つづく)
|
関連記事
<11>世界的な農業転換の波に飲まれて 和田秀子(フリーライター)
<10>真綿で首を絞めるような米国の食糧戦略 和田秀子(フリーライター)
<9>窮状訴え日本への陳情の旅 和田秀子(フリーライター)
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
「株式会社コチア青年セラード開発」を興した3名。左から蛸井さん、中沢さん、横田さん





|