欧州司法裁判所は5月17日、2013年にEU委員会が施行した3種類のネオニコチノイド農薬の一時使用禁止を支持し、バイエルとシンジェンタの求めた差し止め請求を退けた。欧州司法裁判所の今日の決定が、予防原則による農薬規制強化を支持していることは注目すべ点だ。(有機農業ニュースクリップ)
EU委員会は2013年、ミツバチへのリスクを再評価する間の一時的な措置として、3種類のネオニコチノイド系農薬(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)の屋外使用の原則禁止を決めた。欧州司法裁判所は決定で予防原則に言及し、EUの予防原則は「公衆の衛生と安全、環境の保護が優先する」としたという。
EU委員会は4月27日の植物・動物・食品・飼料常設委員会において、16か国の賛成で、一時使用禁止としていた3種類のネオニコチノイド系農薬の永続的な屋外使用禁止を決めた。
・Reuters, 2018-5-17 EU court upholds insecticide ban to protect bees https://www.reuters.com/article/us-eu-environment-bees/eu-court-upholds-insecticide-ban-to-protect-bees-idUSKCN1II0WU
この決定に対してグリーンピース・欧州や国際農薬行動ネットワーク・欧州はそれぞれ声明を発表した
グリーンピース・欧州は17日、「EUの優先事項は、企業の利益ではなく人と自然を守ることである。 裁判所への提訴を恐れることなく、委員会が他の危険な農薬について行動するよう求める。」としている。その上で、フランスのような全てのネオニコチノイド農薬の禁止、その他の農薬にも同等の厳しい評価を行うこと、科学農薬の使用をやめ総合的病害虫管理(IPM)を進めるよう求めた。
・Greenpeace Europe, 2018-5-17 EU court: protecting people and nature takes precedence over business interests http://www.greenpeace.org/eu-unit/en/News/2018/EU-court-protecting-people-nature-precedence/
国際農薬行動ネットワーク・欧州も17日の声明で、欧州食品安全機関(EFSA)がネオニコ系農薬の用いた評価手法(Bee Guidance Document)が農薬の有害な影響からミツバチ保護に不可欠なツールであることを明確に示していると指摘している。
・PAN Europe, 2018-5-17 Neonicotinoids: the European Court of Justice upholds the 2013 decision to impose restrictions on their use https://www.pan-europe.info/press-releases/2018/05/neonicotinoids-european-court-justice-upholds-2013-decision-impose
残念ながら日本の農薬規制は、欧州司法裁判所の決定のような「予防原則」がなおざりにされ、産業界の経済的利益が優先されているのが実情だといえるだろう。
【関連記事】 ・EU委員会 3種類のネオニコ系農薬の屋外使用禁止を決定 http://organic-newsclip.info/log/2018/18040915-1.html
・ネオニコチノイド系農薬はミツバチに高いリスク EFSAの再評価 http://organic-newsclip.info/log/2018/18030892-1.html
・ネオニコ系農薬の代替はIPMが有効 新たな研究 http://organic-newsclip.info/log/2018/18020890-1.html
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